【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
サラは玄関の石畳の前にしゃがみ、紙袋の中から桃を1つ取り出した。
その桃を石畳の上へと置く。
「母さんも、桃が好きだったよね。」
そう言いながら、サラは両方の手のひらを顔の前で合わせ、そっと瞳を閉じた。
“ご先祖様にお祈りをする時は、こうして手のひらを合わせるのよ。”
昔、母が教えてくれた“壁外”の儀礼だった。
その時だった。
「なぁ、何してるんだ!?」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには少年が立っていた。
凛とした緑色の瞳をした少年。
歳は…10歳くらいか、背中には薪を背負っていた。
緑色の瞳をした少年はサラの横へやって来ると、不思議そうにサラの顔を見つめる。
「昔、ここに私が住んでいた家があったんだ。」
「へぇ~、そうなんだ。」
そう答える少年の視線は、石畳に置かれた桃へと注がれていた。
「…美味そうな桃だな。」
少年がポツリとつぶやく。
この季節の桃は珍しい。
偽りのない少年の言葉に、サラはふふっと微笑んだ。
「君にもあげるよ。」
そう言いながら、サラは腕に抱えた紙袋の中から桃を1つ取り出し、少年に差し出した。
すると少年は「こっちのでいいよ。」と、石畳の上の桃をわしづかみにする。
「いい匂い。」
邪心のないその幼い笑顔は、嬉しさで溢れていた。
少年はくるりと後ろを振り返ると、大きな声で叫ぶ。
「ミカサ!!桃もらったぞ!!」
サラは立ち上がると、少年が叫んだ先を見る。
そこには赤いマフラーを巻いた黒髪の少女が立っていた。
少年と同じ10歳くらいの少女は、やはり少年と同じく背中に薪を背負っていた。
「エレン!!きちんとお礼を言って!!」
黒髪の少女が叫ぶ。
エレンと呼ばれた少年は、サラの方へと向き直ると「ありがとな。」と照れくさそうにはにかんだ。
少女のもとへ駆けだそうとする少年を、サラは呼び止める。
「もう1つあげるよ。彼女のぶんだ。」
「やったぁ!!ありがとう!!」
桃を受け取る少年の手は、小さくもたくましかった。