【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
大きな紙袋を腕に抱え、先ほど来た商店街を歩いて戻る。
振り返ると、モーゼスの母親が笑顔で手を振っていた。
ほのかに漂う桃の香りに顔をほころばせながら、サラは深々と頭を下げた。
こうして紙袋を抱えて歩いていると、サラは幼い頃に母と弟と買い物を終え、家路を歩いた日々を思い出す。
“もう歩けない”とぐずる弟を、母は背中におぶる。
“私が持つよ”と、サラは母の手から買い物袋を奪い取った。
“重いからいいわよ”と言う母の前を、“重くないもん”と、得意気になって袋を引きずりながら歩いた。
父さんがいない間は、母さんも弟も、私が守らなきゃ。
そんな事を思っていた。
馬車が来るまではまだ時間があった。
サラの足は自然と、門前町とは逆の林側の地区へと向かっていた。
徐々に狭くなっていく道を、速足で歩く。
民家がまばらになり、人通りもほとんどない。
腕に抱えた紙袋からは懐かしい桃の香り。
なぜか心がトクントクンと波打った。
ゆるい坂を下り、角の家を曲がる。
そこには草原が広がり、大きな落葉樹が1本立っていた。
サラは落葉樹のふもとまで、枯草の中を歩く。
冬の冷たい風にさらされていた枯草は、地面に寝そべるように倒れ、これから訪れる春の暖かさを待ちわびているかのようだった。
サラは落葉樹のふもとまでたどり着くと、寝そべる枯草の中から、わずかに残る民家の基礎部分を探し出す。
生い茂る草木に飲み込まれ、この季節でなければ見付ける事はもう難しくなってしまった民家の跡。
石畳の玄関部分だけは、昔と変わらずサラの帰りを待ってくれているようだった。
「母さん、ただいま。」
そこは15年前まで、サラが母と弟の3人で暮らしていた家があった場所だった。