【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
モーゼスはサラの真剣な眼差しを見つめ、フっと小さく微笑んだ。
「お前の言いたい事はよく分かる。」
そう言いながら、モーゼスはティーカップに残された紅茶を飲み干すと、再び台所へと向かった。
紅茶を入れ直しているのだろう、台所からは湯を注ぐ音が聞こえた。
「お前は紅茶が苦手だったか?」
紅茶を出されたにもかかわらず、一向に口を付ける気配のないサラへ、モーゼスは台所から尋ねた。
「いいえ、頂きます。」
サラは冷たくなったティーカップを手に取り、紅茶を一気に流し込む。
ほろ苦い味と香りに、再び胸が締め付けられるような思いがした。
「こうしてしばらく兵団を離れ、お袋と2人で穏やかな生活をしていると、ふと、俺の人生にはこういう選択肢もあったんだろうなと思う時がある。
今までお袋には散々迷惑をかけてきたんだ。
これからは、側にいてお袋を支えたいと思ったよ。」
モーゼスは熱い紅茶が注がれたティーカップを片手に、再び窓際の椅子へと腰を下ろす。
「しかし、壁外へ出る事によって俺達は知ってしまった。
この穏やかな日常が、次の瞬間には崩れ去ってしまう…そんな危うい状況に置かれている事を。
それを知ってしまった以上、もとの暮らしには戻れない。
この穏やかな日常が、お袋の笑顔が…この先もずっと続く世界が来るのならば、俺は壁外で巨人と闘い続ける。
だからこそお前も、恋人との別れを選んだんだろ?」
「よくご存じですね。」
「あぁ。3年ほど前だったか。
お前が食堂で泣いているのを見かけた。」
呼吸をするのも苦しいほど、サラの胸は締め付けられるような思いでいっぱいになった。