【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
「詳しく話してくれないか。」
そう言うとモーゼスは、ティーカップの紅茶を一口すする。
辺りには紅茶の香りが漂っていた。
こんな春の日差しが差し込む穏やかな午後に、紅茶を飲みながらする話が調査兵団の話である事に、なぜかサラは後ろめたさを感じた。
調査兵団の状況の報告。
それがここへ来た本来の目的であったはずなのに、モーゼスの母親の笑顔、そしてモーゼスの生々しい傷跡を見てしまったら、胸が締め付けられるような思いがした。
しかし、モーゼスの望みとあらば、全てを包み隠さず話すべきだ。
サラはゆっくりと口を開いた。
「現状からお伝えしますと、私はもう“分隊長”ではありません。
なので、現在進められている次回の壁外調査の詳しい概要や方針は把握出来ておりません。」
そう前置きをし、サラはこの1年間に起きた全ての出来事を話した。
壁外調査の廃止を強く求める議員が現れた事、リヴァイを入団させた事、ロヴォフを追放した事、そして…それが引き金となり、議員達の圧力がサラへとかかっている事。
そして、半年後に予定されている壁外調査につけられた条件。
サラは自分の知り得る限りの情報をモーゼスへと話した。
紅茶をすすりながらモーゼスはサラの話に耳を傾ける。
顔色ひとつ変えず、状況を飲み込もうとするモーゼスの姿に、調査兵団分隊長としての威厳を感じた。
頼もしさ溢れる佇まいに、やはり次期団長はモーゼスが相応しかったのではないかと、サラは思う。
いや、あの時もしモーゼスが深刻な怪我を負わず、入院生活を強いられる事がなければ、間違いなく団長に指名されていたのはモーゼスだったはずだ。
サラは目の前に置かれたティーカップへと手を伸ばす。
むせかえるような紅茶の香りに、やはり口を付ける事は出来なかった。