【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
「まさか直接会いに来てくれるとは思っていなかったよ。
それは…手紙では書ききれないほど、調査兵団の状況が芳しくないという事か?」
モーゼスはそう言いながら立ち上がり、台所へと向かう。
カチャカチャとティーカップの音が聞こえた。
「お気遣いなさらないで下さい。」と言うサラに、「俺も喉が渇いたんだ。」とモーゼスは返す。
退院したてのモーゼスを台所に立たせてしまった事を申し訳なく思うサラであったが、しっかりとした足取りで歩くモーゼスを見て、少しほっとした。
「あなたがいなかったこの1年、兵団内の様々な構造が変わりました。
1番は、やはりエルヴィン団長に代わり、キース団長が再就任という形で兵団に戻っていらっしゃった事でしょうか。」
「…噂は本当だったんだな。」
湯を注ぐ音とともに、モーゼスの低い声が台所から聞こえた。
“前回の壁外調査の指揮を執り、多大な成果をあげたキースが団長に再就任した。”
そんな噂が民衆の間でまことしやかに囁かれいた。
実際はサラの指揮のもと展開された、エルヴィン考案の長距離策敵陣形、奇行種の群れに対する事前の対策、そして何よりリヴァイの活躍によるものであったはずだ。
しかし、そんな兵団の内情を知らない民衆達の関心は“有能なキース団長”に集中していた。
そしてそれは、サラの退団処分、リヴァイの身柄引き渡しをもくろむ議員達にとっては、世論を味方に付ける絶好の機会となっていた。
モーゼスはトレーに載せたティーカップを、サラが座る窓際のテーブルへと運ぶ。
ティーカップを置くモーゼスの手には、生々しい傷跡が残されていた。