【進撃の巨人】 never ending dream R18
第15章 強く結ぶ~故郷~
サラを乗せた馬車がシガンシナ区の街へと入る。
壁外調査の度に通る門前町から、少し林側へ入った地区に、モーゼスの実家はあった。
サラは門前町の角で馬車を降りると、2時間後にまたここへ来るよう、御者へと頼む。
調査兵団所有の馬車はこの町では目立ち過ぎる。
もちろんサラの格好も兵服ではない。
調査兵団として命を落としかけたモーゼスやモーゼスの母親への、サラなりの気遣いだった。
サラは モーゼスの実家である青果店を目指し、商店街を歩く。
懐かしい町並みに、思わず顔がほころんだ。
サラがこの町を去って15年。
あの頃と変わらず、建物や商店は当時のままだった。
母と夕飯の買い物に訪れたパン屋。
可愛いワンピースが欲しいとぐずった洋品店。
父であるエルヴィンが帰宅する日は、決まって酒屋に葡萄酒を買いに行った。
そして、花屋で買った黄色い花をテーブルに飾った。
サラは花屋へ入ると、黄色いガーベラの花束を買う。
モーゼスへの退院祝いだ。
モーゼスの母親が営む青果店へは、幼いサラも母に連れられよく通った。
“サラちゃん、今日はリンゴおまけしとくわね。”
そんな優しく笑顔が素敵なモーゼスの母親が、サラは大好きだった。
商店街の角を曲がる。
モーゼスの母親が営む青果店が見えた。
週末の午後という事もあってか、店頭は買い物客で賑わっていた。
その奥に、笑顔で接客をするモーゼスの母親の姿があった。
髪をひとつに結わえ、花のような笑顔を客達に向けている。
それは、サラが最後に見たモーゼスの母親の姿とは随分とかけ離れていた。
サラが最後に見たモーゼスの母親の姿…それは前々回の壁外調査帰還時、血だらけになりながら意識を失い、落馬したモーゼスに駆け寄る姿だった。
“息子を助けて下さい!!”
そう泣き叫ぶモーゼスの母親を、サラはなだめ、モーゼスを病院へと運んだ。
あの時の憔悴しきったモーゼスの母親の姿が、サラは脳裏から離れずにいた。