第10章 狙い狙われ
「思いっきり吊ってたモンなぁ・・・ありゃ普通に死ぬぞ、体質とか関係ねえよ。うん」
牡蠣殻と深水がいる鬼鮫の部屋の方へチラリと視線を走らせて、デイダラが顔をしかめて言う。心無し気の毒そうなのは自分も十分吊られうる身長で、他人事とは思えないせいかも知れない。
「・・・金になるな」
角都がぼそりと呟いた。飛段が膝を叩いて笑い出す。
「来た来た来たァ、おじいちゃんの起きて言う寝言が来ましたよおォ」
「・・・起きて寝言言ってんのは大概がテメエだ。いい加減寝るか起きるか死ぬかハッキリしろ」
「角都の年では起きて言う寝言ではなく、年相応の思考機能の低下ではないか?」
「・・・イタチさんあなた、案外言いたい放題ですよね?」
「・・・金になる。売ろう、あの女」
「・・・あなた私に喧嘩売ってるんですか?だったら買いますよ?」
「幾らでだ?」
「・・・そんなにお金が欲しいなら、まず自分の珍奇な心臓でも売っ払ったらどうです」
「俺の心臓は他人に渡っても腐れるだけだから金にならないが、そいつの血は金になる」
「・・・腐れなきゃテメエの心臓でも切り売りする気かよ。本物だな、このじじィ・・・」
「残念だ。誰も俺の心臓には金を出すまい」
「心臓が駄目ならヒジキを売りなさい。何を考えてるんですか、あなたは」
「俺は俺がいつも考えている事を変わりなく考えている」
「医者に行きなさい。行ってその衰えた思考機能を多少なりとも改善して貰って来なさい」
「献血にご協力を!」
「何が献血ですか。先にあなたの相方から有り余る血を存分に抜いて来たらどうです。何なら最後の一滴まで献じたらいい。どうせ死にゃしないんですからね、遺憾ながら」
「駄目だ。アイツの血からバカが広まって世界が滅びる」
「・・・伝染るんですか?あの人も大概迷惑に出来てますねえ・・」
「大体金にならん」
「そりゃそうでしょうよ。昨今は粗大ごみだって捨てるのに金がかかるんです。バカが広がるだけのバイオテロじゃ逆にアメリカ辺りから幾ら毟られるかわかったもんじゃない。兎に角、針で突いただけでもいずれジワジワ死ぬんですよ?献血なんてこっちがして欲しいくらいですよ。服薬して止血しないうちは文字通りマッチポンプに過ぎませんけどね」
「ジワジワしてるうちに手を考えろ」
「百年近く生きて来て何ですか、その子供プールみたいな浅知恵は。一遍死になさい」