第10章 狙い狙われ
「いる。同じ話を綱手様にもしたから以下略にて御免。失礼」
腕を伸ばして木偶の坊を停まらせると、足の文を外す。
「忙しくなってきたな。・・・これは全部私の仕事なんだろうかね、やっぱり?」
「まあなあ。お前、磯影だからな」
「磯影ではないと言うのに、木の葉は存外くどいな」
文に目を通しながら苦情申し立てをする波平だが、その変わらない表情からは事態の様子が一切伝わって来ない。
アスマとシカマルは顔を見合わせた。
「おい、俺達は席を外すか?」
「いや、気を使ってくれなくていい。私は五代目のところに行かねばならないがよければ好きなだけいてくれ。後程な、アスマ」
そう言って波平は部屋を出て行った。
「好きなだけいろったってなあ・・・」
「変わった連中スね・・・」
独りごちながらシカマルは波平の残した将棋盤を仔細に眺め、苦笑した。
「すンげえ逃げ将棋。何なんだ、あの人・・・」
イタチの懸念は的中した。
昨今の山賊が大量に不審死している件について、彼は即座に牡蠣殻と音の事を思った。
詳細は知れない。しかし符合する点がはっきりと事態を表している。
「あなたは自分がどれだけ危険な事をしたか知らなければならない」
深水を部屋に招き入れて話した際、イタチは彼に改めて音の里と大蛇丸について詳細を説明した。
磯は他の里と馴染みの薄い為、言わば温室育ちの里人が多い。機を見て敏に動くべき上層はともかく、僅かな里人たちは外の情報に疎い。
恐らくはそれなりの立場にいる筈の深水もその例に漏れなかった。
「学者の物知らずってヤツだな」
傀儡の関節にヤスリをかけていたサソリが、小馬鹿にしたように笑った。
「毒蛇相手に世の為人の為もねえもんだ。呆れ返ってぐうの音も出ねえよ」
「黙れ、サソリ」
ペインがサソリを諌める。傍らにはひっそりと小南が控えている。二人は雨の里の公務に区切りをつけて、今しがたアジトに戻ったばかりだった。
広間にはメンバーが集まってイタチと鬼鮫から、今回の牡蠣殻深水から磯、そして音に至る事共の説明を聞いていた。
「護衛の相手に手ェ出したのか、やるなァこの鮫、スケベ野郎」
飛段が楽しくて仕様のない様子で鬼鮫に突っ込む。鬼鮫はうんざりした顔で飛段を見、
「手なんか出してませんよ。あなたが期待するような意味では。危害を加えるという点においては否定はしませんが」