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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第10章 狙い狙われ


カブトは考え込みながら独りごちた。それを横目に大蛇丸はフッと失笑する。
「そう簡単に行くかしら」
「は?」
「磯の連中が本気で逃げ隠れしたら簡単には見つからないわよ。あいつらは幽霊みたいなもんなんだから。甘く見ない方がいいわね」
「ああ、逃げ足と隠れ身に秀でた一族だとは聞いていますよ。油断はしません」
「大戦後生まれはしらないものね」
大蛇丸の含みのある言い方にカブトは顔をしかめた。物知らずの扱いは愉快ではない。
「まあ今時黄泉隠れの磯って言っても、わかるコはなかなかいないでしょうね。フフ」
「黄泉隠れ?」
「幽霊を捕まえるのは骨が折れるのよ。・・ゴロツキで色々試しすぎて目立ち始めてるわ。弁えて動く事ね」
「わかっていますよ。大蛇丸様」
カブトは肩をすくめて眼鏡を押し上げた。
「深水を捕らえて用を済ませたら、検体を手に入れます。わざわざ微量の血液の為にコソコソ動き回るのにも飽きてきましたから」
にやりと笑って包帯の巻かれた肩口を押さえる。
「これでボクも人の悪いところがありましてね。木でくくった鼻をあかしてやるのが楽しみですよ」

木偶の坊は深水がしたためた文を託されて再び空へ放たれた。
「・・・波平様はわかって下さるだろうか」
見送りながら深水はポツリと呟いた。
「先代の長老連に毛嫌いされる程度にはフランクな考え方をなされますからね。案外アッケラカンと認めて下さるかも知れません」
「・・・牡蠣殻。どうすればそう適当な事が言えるのか」
深水は教え子を諦め顔で見て苦笑した。牡蠣殻は木偶の坊の飛び去って行った方を眺めがら、真顔で答える。
「結論が出るまで何が適当な事かなんてわかりませんよ、先生」
「成る程それもまた然りだな」
深水はしげしげと牡蠣殻を見遣った。
「私はお前に厳しすぎた。許せ」
「おお?何ですか、止めて下さいよ。そんな風に言われると反って怖いですよ」
「・・・全くお前は仕様のない患者で教え子だった。頼むから達者でな。気掛かりをかけないでくれ」
「達者でいますよ。安心して下さい」
「食を怠らず、嗜好は控えろ」
「酒も煙草も先生と杏可也さんから覚えたんですよ」
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