• テキストサイズ

連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第10章 狙い狙われ


夥しい量の血が床を埋め尽くしている。その中心に、大柄な男が呆然として座り込んでいた。不思議そうに、他の感情は全て削げ落ちたかのようにただ不思議そうに、己の手の甲の切り傷からダクダクと流れ出す血を眺めている。
「やっぱり体が大きいとねえ。血量が多いから後始末が面倒ね」
「当たり前ですよ。だからこの被験者は止めた方がいいと言ったんです」
「鬼鮫の話を聞いたせいかもね。何となく大柄なコで試したかったのよ」
大蛇丸は興味深くガラス越しの被験者を眺めながら口の端を上げた。
「まあ、この薬もまた失敗って事ね。血液の伝染性も一代限りみたいだし、どうするの、カブト」
「深水との接触に失敗したのは失策でした。この件に木の葉のみならず暁まで出張って来るとは想定外で・・・」
「前の取り引きのときにイタチくんと鬼鮫がいたのはわかってたんでしょう?」
「その後の経緯が何と言うか・・・」
「何?」
「文通でして・・・」
「・・・は?」
「文章のやり取り・・・」
「が、ない文通があるなら教えて欲しいわ」
「あ、そうですね。ふうん・・・」
「・・・ふうんてカブト、あなたもしかしてバカなの?嫌だ、自分でもびっくりするくらいバカは要らないのよね・・・。死んどく?」
「・・・誰が部下に甘いって?」
「何?」
「いえ、兎に角、政治的なやり取り抜きの、正に所謂文通・・・」
「ペンパルってわけね。やるじゃない、あの鮫」
「ぺ、ペンパル?」
「文通だか何だか知らないけど肝心なところで邪魔されるなんて、結局状況の読み間違いでしょう。深水は奪われるしねえ」
「彼に関して言えば薬の製法さえ聞き出せれば後は死んで貰った方が好都合なんですが」
「深水がいない、薬はないじゃ検体を連れて来てもすぐ死ぬだけね」
「細胞のサンプルがとれれば・・・」
「クローンは確実性がまだ低すぎるわよ。失敗が多過ぎる」
大蛇丸は動かなくなった被験者からカブトに目を移した。
「大体深水が薬を量産し始めて広めたら兵器としての意味もなくなるじゃない。効果は四ヶ月だけ、しかも次代の血液は伝染性を持たない、当の検体は脆弱。半蔵の毒みたいなものでリスクだけ高いような気がするけどね」
「確かに改良の余地がある・・・検体を先に捕獲した方がいいかな・・・暁まで出張って来た日には接触が面倒になる一方だ・・・」
/ 249ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp