第9章 火影 磯影 木偶の坊
「え?太陽の塔?」
「あなた変わりませんねえ・・・」
「干柿さんこそ相変わらずの情緒不安ぶりで。周りの迷惑が目に浮かぶようですよ」
「安心して下さって結構ですよ。全うな人に無闇に迷惑をかけるような真似はしていませんから」
「成る程。先生や私は全うじゃないと仰る?」
「感心ですねえ。自覚があるのは立派な事ですよ、牡蠣殻さん」
「・・・貴方ホント何でうちの師弟をピンポイントで狙って来るんですか。もっと外の世界に目を向けて下さいよ。世の中には佃煮にする程沢山人がいるんですよ?干柿さんデカすぎて見過ごしてるんでしょうがね。逸材がゴロゴロしてますよ」
「ほう?例えば?」
「そうですねえ・・・取り合えずサソリさんなんかどうでしょう?」
「自分の恨みを人に晴らさせようなんて姑息な事考えないでしょうね?」
「駄目ですか。何なら相討ちもありの方向で検討していただけれ・・・だ・・ッ」
鬼鮫にスパンと叩かれて牡蠣殻は頭を抱えた。
「手が早い!早すぎですよ、貴方たちは!脊髄反射で乱暴を働く人の更正施設ですか、ここは」
「はいはいそうですよ、残念でしたね。諦めて殴られてなさい」
「またまたご冗談を」
確かめるように顔を向けた牡蠣殻にイタチが笑顔を見せる。牡蠣殻はヒッと背筋を伸ばした。
「怖い怖い怖い。綺麗な顔でそんな笑われると反って怖い。喋る鮫より怖・・ぶッ」
「誰が喋る鮫ですか?どさくさに紛れて好き勝手言わない」
「いやこれはサソリさんが魚屋なんて言うから・・・所謂連想?」
「ほう?私と魚は一連なりと言う事ですか」
「いえいえ、一連なりなんてそんなご謙遜を。そのものズバリと言うか、かなりの精度で半分方あっちにいっちゃってますよ」
「・・あなたそういう目で私を見てるんですか。つくづく怖いもの知らずですねえ」
「悪いのは私じゃありません。サソリさんです」
「よくまあ恥ずかしげもなく言い切りますね。サソリを呼びますか、ここに」
「すいませんでした」
「しかしあなたいつの間に魚屋なんかになったんです?私を売り飛ばす気ですか」
「何言ってるんです干柿さん。私は魚屋じゃありませんし、貴方が売れる訳ないじゃないですか」
「・・・相変わらず口を開けば失言ばかりなんですねえ・・・」
「・・・干柿さんこそ、魚屋で売られるなんてすっかり自ら魚気分じゃないですか・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」