第9章 火影 磯影 木偶の坊
「何で?カレー美味しいのに」
呑気に言うチョウジに、テンテンとネジがいっそ慈愛の笑みと言っても良い諦観の微笑を向けた。
「じゃ、ガイ先生に言っといてあげるから、今度はチョウジくんもご馳走になるといいよ」
「そうだな。何事も経験だ。一皮剥けてくるがいい、チョウジ」
「楽しそうだねえ。昼から焼き肉とは豪勢だなぁ」
ヒョイと顔を出した男に、全員目を向けた。
「カカシ先生」
「給料日後のニッパチキューは凄いね。勢揃いじゃないの。一番うるさいのがいないけど」
「ナルトなら一楽ですよ」
「ふうん。まあね、ラーメン食べないと死んじゃうからね、アイツは」
やっこらとシカマルの隣に腰を下ろし、カカシは店員から受け取った温い手拭いで手を拭いた。
「烏龍茶とオススメセット、浅蜊チゲつけてね」
「カカシ先生も今日は焼き肉ですか」
「ニッパチキューだしね。キミたちは打ち上げ?」
いのとシカマルとチョウジの十班メンバーを見回して、カカシはニコニコと聞く。
「アスマに奢らせてやればいいのに、優しいねー、キミたち」
「奢らせてやろうと思ったのに、捕まんなかったんスよ」
「あはは、そりゃ残念だったね」
突き出しの胡麻油がかかった冷奴を突つきながら、カカシはいのとシカマルの顔をじっと見た。
「また派手にやられたねえ。火事場泥棒とでもやり合って来たの?」
「違いますよ。何だか土塊か粘土みてえな変な飛び道具を使うヤツがいて・・・」
シカマルは顔をしかめて焦げかけた肉を拾い上げ、取り皿にのせた。カカシがそれをヒョイと横取りする。
「何だかエライ強そうな連中だったんでしょ。ならむしろ、その程度ですんで良かったのかな」
「・・・まあ、そうスかね」
「凄かったよね、丸太みたいな刀を軽く使いこなしちゃって」
些かムッとしたシカマルに、チョウジがとりなすような格好で話の接穂を拾う。カカシは店員の運んできたお茶と浅蜊チゲを受け取り、イソイソと蓮華を手にとった。
「粘土が飛び道具とか丸太みたいな刀とか、話だけ聞いてると色物だけど・・・」
テンテンが首を捻る。
「冗談みたいなモノを使いこなすんだからホントに強いんでしょ」
浅蜊の殻を小鉢にカランと投げ入れて、カカシは十班の面々を改めて見回した。
「キミたちが無事に戻って来たって事は、その連中、目的は達したって事だ。連中の目的は何だったんだろうね」