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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第9章 火影 磯影 木偶の坊


「・・・お前ホントに父親に似てきたな・・・懐かしいよ、この感じ」
「それは父も喜ぶでしょう。父は綱手さんとのやり取りを楽しんでいました。何よりの供養になります」
「おや、そうかい。あの破波がねえ・・・」
「きっとあの世で手ぐすね引いて貴女を待ってますよ」
「・・・おい」
片手を上げて綱手の更なる突っ込みを止め、波平は資料に目を戻した。
「死体から出た血は時が経っていたのに凝固していなかったようですね。凄惨な現場で死亡推定時刻と血液の凝固状態の前後関係にまで目を配れる、報告書を作製した人物は非常に冷静かつ有能です」
波平の誉め言葉に綱手は思わず表情を緩めた。
「アタシの弟子が現場から仕切って検死したんだ」
「良いお弟子さんに恵まれて結構な事です」
波平は資料をカサカサと重ね直し、綱手の手元に返して立ち上がった。
「山賊の事とは言え、痛ましい事件ですね。では私はこれで・・・」
「一年前の話をぶり返させて貰おう。何故音の里と関わった?」
綱手の声音が変わった。
「やっと核心に入りましたね。弱みのある今なら口を割るだろうというところですか」
立ったまま腕組みし、波平は綱手越しに窓の外を眺めた。
「貴女の仰る通り、このまま流浪の里として磯が存在し続けるのは難しい。心強い後ろ楯を立てようと思ったのですよ」
「大蛇丸がまともな後ろ楯になどなる筈がない」
「タイミングですよ。音は磯のものを欲しがっていた。交渉がスムーズに進むと思ったのです」
「木の葉が介入しなければ、磯は音の同盟と見なされていた。平穏無事にはすむまい」
「なら逃げるまで」
波平はアッサリと言い切った。
「磯はそういう里です。くれぐれもあてになさらぬよう頼みますよ」
「・・・音は、大蛇丸は、磯の何を欲しがったんだ?」
「里人ですよ。いささか変わった体質を持つ」
言いながら波平はまた窓の外へ目をやった。
「尋ねる体をとっていますが、口に出される以上に色々ご存知の様だ。あの若い護衛たちからの報告もあったでしょう。私も心当たりを話しますから、五代目も単刀直入にどうぞ」
「深水と言う男が音のカブトなる医療忍者と繋ぎをとっている。知っていたか」
「ほう・・・深水とはわが義兄ですが、彼がそんな真似を。成る程これは意外だがわからなくもない」
「杏可也の連れ合いか・・・音は磯の話術で手玉にとれる相手ではない。危険だ」
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