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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第7章 磯から暁へ


「何だ、鬼鮫が来るまで閉じ込めておくのか」
やれやれと本を積んで重ね、角都が咳払いしながら聞く。まだ笑いの滲む声を誤魔化したいらしい。
「誰が閉じ込めるっつった?俺ァ丁寧にもしまっとけっつったんだ」
「いいじゃねえかよ、散らかしといたってよ。出しっ放しで減るモンじゃあるめェしよォ」
にやにやしながら飛段が口を挟む。
「あぁ?俺の繊細な神経がすり減んだよ。何ならオメエもしまわれとけや」
「俺ァ散らかってる方が落ち着くんだよ。そんな気になんならよ、テメエが片付いてりゃいんじゃねえ?」
「珍しく冴えてるな」
「お、角都、誉めてくれちゃう?俺ァ誉められて伸びるタイプなんだよなァ、誰もわかってねえみてェだけどよ」
飛段は組んだ両足を行儀悪く卓にのせてゲハハと笑った。
「あの、イタチさん?」
本を小脇に抱えた牡蠣殻がイタチに声をかけた。
「いいんでしょうかね、干柿さんのお部屋にお邪魔して?」
「構わないだろうが、あなたが気を使う必要はない」
「いえいえ、気など使ってません。叩かれたくないだけなのです」
「・・・成る程」
カッカしているサソリを横目で見て、イタチは静かに頷いた。
「賢明な判断かも知れない」
「俺が部屋に行くから散らかってろ」
話を聞き付けたサソリがイライラと口を挟んできた。
「おぉ、行け行け、牡蠣殻ァ、安心して散らかっとけ。お人形ちゃんはお部屋でお人形遊びだ」
「・・・人形遊び・・」
呟いた牡蠣殻は、しげしげとサソリを眺めた。
「そうですか、お人ぎょ・・・がッ・・」
何か言いかかった牡蠣殻の頭に、サソリの投げた文庫サイズのハードカバーがスコーンと当たった。
「たー・・・、角、たた、角が直撃しましたよ、何投げてるんです・・・」
「テメエ今俺ン事馬鹿にしようとしたろッ」
「わあ、凄い言いがかり来ましたよ。わたしはただお人形遊びが似合いそうだと言いたかっただけです・・・」
「思いっきり予想通りじゃねえかよ、このバカ!」
「え?予想通りでしたか?駄目でしたか?サソリさんくらいなら人形で遊んでもまだセーフなお年頃ですよ、ええ、多分・・・そういう中学生がいても大丈夫です」
「人形遊びなんかする中学男子はアウトだし、俺は三十過ぎのいい大人だッ!」
「えッ!・・・アーノルド坊や・・・?」
「変な気使って世代に合わせたネタ振ってんじゃねえ!懐かしいじゃねえか」
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