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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第7章 磯から暁へ


「大体息子の見合いの席で息子嫁になる女の鰻を食べるような即物的な精神科医が、無邪気に自然を謳いあげる句を詠むのが面白い。更にそんなヤツの初版本に何十万何百万の値がついている。たかだか十七文字を捻りだし続けて濡れ手に粟、奇跡だ」
「何が奇跡だ、馬鹿かオメエ」
「・・・いや、多面性が産む創作物が奇跡だということだろう。わからないでもない・・・」
「俺は初版本の価格設定がミラクルだと言ってるんだが、どこで解釈を端折った、イタチ?」
「家賃滞納して近所がうるせえって大騒ぎしてガス管くわえておっ死んだヤツがノーベル賞とる世界のどこが奇跡だ。本なんか読んでても書いてても頭がぶっ壊れるだけだっつの」
「給料の前借りばかりの借金魔で、高級品好きの女好きという悪魔のような男が薄幸の俳人に祭り上げられる世界だからな。金がないからと言って手相を見たり蟹に遊興を強要したり、そんな馬鹿でも十七文字で濡れ手に粟・・・」
「辞典マニアにさんざっぱら迷惑かけてな。国を敵にまわしてるぜ、文学なんてクズはよ」
「詳しいな。隠れか、サソリ」
「ツンデレというのか、こういうのは・・・?」
「ぶ。どこで覚えてきた、イタチ。止めろ、オメエ似合わねえぞ・・・」
「デイダラが教えてくれた・・・まだ今一つよくわからないんだが、使い間違ったか?」
「ダハハハ、何の話か1個もわかんねえけどイタチが面白ぇからいいか!」
「わかんねえなら黙ってろ、黙ってるくらいが丁度いいんだよオメエは」
卓に積まれた本を中心に、暁の広間は偏狭な文学談義に花が咲いていた。
「兎に角よ、片付けろこのゴミをよ!俺ァババアに本読め本読めってヘドが出るだけ押し付けられて、虫酸が走るくれえ大っ嫌いなんだよ、この手のゴミがよ!」
珍しく感情的になっているサソリに、本好きな角都は一冊の頁をめくりながら頓着なく、
「割りに詳しい。本当は好きなんだろう?」
「ばッババアが本か、本がババアかってくれえ嫌ぇだ!」
「身内の年寄りと本の区別がつかないのか?」
イタチの台詞に、飛段はアジトが崩れ落ちそうな大笑いをし、角都も心持ち俯いて肩を震わせた。



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