第6章 内股膏薬
「腰巾着はご挨拶だな。ボクはこれでも相応に大蛇丸様のお役に立ってるんだよ?フフ、言ったら干柿さん、あなたこそイタチくんの腰巾着みたいなものじゃないかな」
「イタチさんがぶら下げるには私は大きすぎですよ。そもそもあなた、腰巾着の意味がちゃんとわかってないようですねえ?でなきゃそんな事言い出す筈がない。ふ。私が腰巾着?人の体で遊んでないで、少しは本でも読んだ方がいいですよ」
「ご執心の礒辺みたいに?重症だなあ」
初めて聞いたが、すぐわかった。
礒辺が名なのか。そういう名だったのか。
「そうそう、牡蠣殻礒辺の話だよ。ハハ。悔しいかな、あなたが知らなかった彼女の名前をボクが知ってるなんてね?」
「・・・・・」
「一年も前に知り合っていながら相手の名前も知らずにいる。どういう関係なのかな?」
カブトは面白そうに鬼鮫の反応を伺っている。
「これでボクも彼女とは、そこの深水さんを通して少々付き合いがあるんだよ。これも勿論、知らなかっただろうね」
「よォ鬼鮫、コイツやっちまっていいか?うん?前っから気に食わなかったんだよな。旦那と陰でコソコソしてやがってよ。オイラの新作で粉々にしてやるぜ、うん」
指をポキポキ鳴らしながらデイダラが前に出たのを、長い腕を伸ばして遮る。
「どうやら一年前の取り引きは、それなりに続いていたようですねえ。成る程、自分で言うように大蛇丸の役には立っている、訳だッ」
鬼鮫が速攻で鮫肌を振りかざして、カブトに打ち下ろした。
「あッ、きったねえぞ!鬼鮫!」
デイダラの叫びを他所に鮫肌は唸りを上げてカブトに襲いかかった。
リーチの長い鬼鮫が大刀鮫肌を扱うのだから、その間合いは度外れて広くなる。
十分距離をとって対峙していたつもりのカブトは、そこに捕らわれていた。重量で更に加速する鮫肌の太刀筋を辛うじて避けると、後ろに飛び下がる。
マントの肩口が鮫肌の牙のような刃に噛み千切られ、大きく持って行かれた。
「体も太刀も大き過ぎでもっと鈍重になりそうなものを、相変わらず速い。流石だね」
僅かにかすっただけなのに、肩の肉が削られて血が流れ出るのを感じる。
「怒らせたなら謝るよ。どうもボクは言葉を選ぶのが不得手の様だ。暁とやり合うつもりはない。深水を置いて退いてくれないかな」
カブトは肩を抑えて、鬼鮫とデイダラを見比べた。
「彼はボクの味方だよ?」