• テキストサイズ

連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第4章 文通


手紙を書く。勿論届ける相手あっての事だ。
ところがこの相手、常に移動し続けている。個人的に旅行している訳でも移動の多い仕事をしている訳でもない。遊牧民か犯罪者のように、四六時中里ごと引っ越す、そういう一族の一員なのだ。端から見ると必然もなくうろうろしている自意識過剰な連中でしかないが、本人たちがそうしていないと落ち着かないというのだから仕方がない。しかしこちらにしてみれば迷惑な話である。
相手が筆まめではない上にしょっちゅう移動している為、タイムラグの生じた手紙がたまって行く。
腹立たしい。
またそうした手紙を読もうとする馬鹿が二人も身近にいて、いよいよ殺すしかないかと思っているところだ。
「人の部屋の前で何をごそごそやっているんですか?デイダラ」
暁最年少でまだまだ落ち着きのないデイダラは、この頃鬼鮫の部屋に入りたくて仕方がない。そこには必ず笑える大ネタが隠されているに違いないからだ。
「何だ鬼鮫、出かけたんじゃなかったのか?鮫肌の手入れに使うヤスリを買いに行くって聞いたけどな。早く行かないと売り切れるぞ?」
「昨日飛段がうんうん唸りながら"うっかり"折り曲げたあのヤスリは特注品でしてねえ。すぐには手に入らないのですよ。注文だけして来ました。当分は鮫肌の手入れに飛段の顔を使ってやろうと思っていますよ。ええ」
「チ」
「今舌打ちしました?」
「うん?舌打ちなんかしてないぞ、空耳だろ」
「そうですか、空耳ですか。ところで私、最近かかると死に至る程度のトラップを部屋に仕込みましてね。試してみたくてたまらないんですよ。飛段にも伝えておいて下さい。ああ、鍵は開けておきますからくれぐれもドアを蹴壊したり爆破したりしないで下さいよ。そんな事したら文字通り殴り殺してあげますからね。いいですね?死ぬまで殴りますよ。楽しそうでしょう?」
「飛段に鬼鮫が怒ってるって言っておくな、うん」
「おや、詰まらないですねえ。死なない彼を死ぬまで殴るのは根気のいる事でしょうが、それだけ憂さもすっきり晴れると思いますよ。罠にかかってくれるよりずっといいかもしれませんねえ。未成年のあなたを殴るのは気が退けなくもないですが、手入れに不備が生じてしまった今、鮫肌はあまり使いたくないんですよ。我慢して下さい。やれやれ、楽しみですねえ。・・・本当に飛段に忠告するんですか?」
/ 249ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp