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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第27章 黄泉隠れ


「・・・・・あのよ、鬼鮫・・・」
「・・・・・」
「いや、俺が謝んのもおかしンだけどな。あー、何か、うちのじいさんが悪かったな?・・・や、俺もアイツがこんな真似しやがるたァ思やしなかったってぇかよ、まあ、何だ、お互いやられちまったっての?・・・・鬼鮫?」
「・・・・・」
「一応よ、鹿の森とかってのに行っとくか?まぁ、あんなンして行っちまったとこを見りゃあ、十中八九いやしねえと思うけどよ」
「・・・・・」
「参んなァ、俺ァこういう空気ァ得意じゃねんだよ・・・・」
飛段はバリバリと頭を掻いて口を尖らせた。
「よぉ、鬼鮫・・・」
「・・・・考えているんです。黙りなさい」
「あ~あ、ハイハイ、わかりましたよォ。たく、俺が何したっつうの。えれぇ貧乏クジだぜ」
ボヤく飛段を完全に無視して、鬼鮫は目まぐるしく頭を巡らせた。
"目的が目的ですから、簡単に危害は加えないでしょう。・・・初めはこの宿で採血するつもりだった筈。散開の騒ぎに乗じて私が牡蠣殻を連れて逃げるとでも?馬鹿な。反って事を面倒にするような真似を誰がしますか。それがわからない角都ではないでしょうが・・・"
それと信じる信じないは別だ。要はそういう事なのだろう。
角都は鬼鮫も牡蠣殻も、飛段さえ、この取り引きにおいて信用していない。
"あの金の亡者が信じるのは金のみ。どこへ行く?利害を挟んで信用できる相手・・・"
利害。
フと鬼鮫は目を細めた。
"利害にも類いがある・・・"
金でもなく血でもなく、牡蠣殻自身を盾に角都に有用な交渉が出来る相手。
"深水"
牡蠣殻の師であり、主治医であった男。牡蠣殻の血を抜き慣れ、その血に誰より詳しい人間。
「砂か」
呟いて鬼鮫は立ち上がった。
「はあ?」
釣られて飛段も立ち上がる。
「砂って砂?何、何で砂なのよ?わっけわかんねェな」
"・・・始末した音の中にカブトが見当たりませんでしたね・・"
再び鬼鮫は座り直した。
「何だ何だ?米つきバッタか、オメエは」
釣られて飛段も座り直す。
"カブトの利害もまた深水に繋がる・・・砂にいる事を嗅ぎ付けましたか?"
もしも。
深水か杏可也を盾に迫られたら牡蠣殻はどうする?
"あの馬鹿は全く考えなしの立ち回りをする"
鬼鮫はまた立ち上がった。
「おいおい、ケツに火ィでもついてんのかよ?」



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