第26章 シカマル受難
波平の声がいつになく遊びのない様子だったので、シカマルはアスマとカカシから目を反らして彼を見返った。
「思わねえ。本当の妖かしはわかんねえ事やおっかねえ事を何かのせいにしたがる自分の頭ン中にいるんだ。だから、磯の人達は妖かしや化けモン何かじゃねえ。そうだろ?そうじゃねえなら、木の葉に置いてくのは止してくれ」
「わかりました。有り難う。君は実に頼りになりそうだ。これで心残りはない。It's foolish bird that own.あのデカブツに嘲笑われずにすみそうだ。跡は頼んだよ、奈良くん」
「ーIt's foolish bird that own?・・・立鳥不濁其跡・・・。待て、どういう意味だ?止めてくれ、オレは関係ねえぞ。アンタの尻拭いする筋合いはねえ!」
「牡蠣殻に背負い込ませて、あれを木の葉に守って貰おうと我ながら呆れるような事を考えていました。こういうところが過保護なのだな、私は。しかし思わぬ適役がここにいましたよ。残る磯の民の相談役を担って欲しいんですが、どうでしょう?」
波平の問いにシカマルは腰を浮かして逃げの姿勢になった。
「駄目だ。絶対やらねえ」
「いいんじゃないの?残る磯人の統括はアスマが引き受けたんだし、君がその補佐をするのは適役ってもんじゃない。オレも協力するからさ」
いつの間にかシカマルの横に座り込んで、彼の頼んだ湯豆腐をつついていたカカシが笑った。
「やってみたって減るモンじゃなし」
「減る訳ないスよ、何言ってんだ・・・減るどころか面倒が増えるんだろ?協力するってんなら先生がやったらいい・・・」
「いやぁ、面倒はごめんかな?」
「・・・当てにならな過ぎる。何が協力だ。オレは関係ねえからな。丸投げの後始末なんざごめんだ」
「丸投げ?」
アスマが波平の隣に腰かけた。
「思ったより早く報せが届いちまってるみたいでな。そろそろ出番だ、波平」
「そう。面倒をかけたね。申し訳ない」
「いいって言っただろ?またそのうち奢れよ?」
「自慢の教え子まで巻き込んでしまってすまないな」
「なぁに、良い勉強になる。なあ、シカマル」
「・・・なあシカマルじゃねえぞ、コラ。何安請け合いしてんだアスマ」
シカマルはアスマを睨み付けた。アスマは煙草をくわえてにやりと笑った。
「コイツは昼行燈だけどな、バカにしたモンじゃないぞ」