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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第26章 シカマル受難


シカマルは盆の窪を片手で押さえて、やれやれと頭を垂れた。目線だけ上げて波平を見やり、
「面白い人かと思ってたが、いい加減なだけなのか、波平さん?」
ぼそっと洩らす。
波平は興味深げにシカマルを見返し、眼鏡のツルに手をかけた。考え込むように口を噤んだまま、眼鏡を上げてシカマルを見続ける。シカマルは波平の視線から目を反らしもせずに眉をしかめた。
「わざわざここで散開するって事は、勿論木の葉を巻き込むんだろ?いや、あてにしてるって言ってもいいな。協定を利用して磯の民を木の葉の庇護下に置くつもりだろ?丸投げか、磯影さんよ?」
「くどいね。私は磯影ではありません。何度言わせるつもりです」
組み合わせた両の手に顎をのせて、波平はいささか憮然とした。
「何故そう誰も彼も磯のような小さな里に影を欲しがるのかわかりませんね。単刀直入に言えば、全く以てナンセンス。当事者達が要らないと言うものを据えたがる、里外人の気が知れない」
「アンタらがどう思おうが周りにゃ関係ねえよ。オレは磯って里はよく知らねえけど、何つうか、アンタら掴みどこがねえんだよな。次が見え辛い上に話が上手く持っていけねえ。狙ってんのか?相手の出方がわからねえ、したい話をさせて貰えねえってのはおっかねえこったよ。わかんねえモンおっかねえモンを、少しでも何とかするにはどうするかったら、名前をつける。そうすりゃ少しはわかった気になれる。わかりゃ怖さもちっとは薄れる。そういう影じゃねえのか、里外人にとっての磯影は」
藻裾が手を上げて肉の追加を頼んだ。シカマルの話などどこ吹く風だ。波平は眼鏡を外して懐の手拭いでそのレンズを拭いている。フッとレンズに息を吹き掛けられて、かけ直されるでもなく眼鏡は卓の上に置かれた。
「・・・君、面白いね。私は妖かしみたようなものって事かな?」
眉間を揉みほぐしながら、波平はぼんやりと店内を見回した。昼前ではあるが、客の入りは悪くない。つられて店内を見回したシカマルは、見知った顔を見かけて口をへの字にひん曲げた。
「・・・まァな。正体が知れずに脅かして来るもんは何でも妖かしか化けモンだ。自分にゃ理解できない何者か。そうした方が収まりがいいんだ」
こちらに気が付いたアスマがカカシを伴って近付いてきた。
「後学までに一つ。君は磯の民をも妖かしか化け物のように思うかね?」



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