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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第25章 犬も喰わない・・・・


「まず言っておきますが、私はこれでテリトリー意識の強い方でしてね」
鬼鮫は湯呑みをスイと干して手酌した。
「テリトリー内に無闇に踏み込まれるといたく腹が立つんですよ。わかりますか?」
「ああ、大変よくわかりますよ。一点の曇りもなく誤解しようがありません。貴方はそういう人でしょうね、間違いなく」
「浮輪さん、生きて帰れてついてましたよ」
「はははは、あの人はあれで妙に運の強いところがありまして・・・て、いやいやいや、ちょっと待って下さい。貴方うちの頭領に一体何を・・・」
「危うく面倒も顧みず血祭りにあげるところでした」
空いた湯呑みをコツリと伏せて、鬼鮫は口角を上げた。
「そういう訳ですからあなたはもっと身の上を弁えなさい。覚えていますかねえ?あなたは私のものなんですよ?」
「息の根を止めるっていうあれですか?あれはそういう意味だったんですか?また極端の上に極端な・・・」
「人に気安く頭など触らせるものではありません」
長い腕を伸ばして牡蠣殻の髷を掴み、ガクガク左右に揺らしながら鬼鮫は目の笑わない笑顔を作った。
「いや、ちょっと・・干柿さん・・・お酒が、零れる・・・」
「他と絡むのは止めなさい。猛烈に殺意が湧くんですよ。何なんでしょうねえ、これは。兎に角まだ死にたくないでしょう?私も早々に楽しみに幕を引くつもりはありませんから、是非自重して頂きたいところですねえ」
ますます激しく牡蠣殻の頭を揺さぶってから、パッと手を離す。牡蠣殻は髷を撫でながら卓に零れた酒を情けなさそうに眺めた。
「私は男性に縁などありませんからね。ご安心下さい。そういう不甲斐ない女がいいと仰るなら、まあ私は最適でしょうよ」
「・・・成る程。そうですか。よくよく覚えておきましょう。謀った日には偉い目にあうだろう事をお忘れなく」
「縁もないのにどうやって謀るんですか」
「知りませんよ。自分で気を付けなさい」
零れた酒を拭いてから自分と牡蠣殻の湯呑みを満たし、鬼鮫は懐に手を潜らせた。
「・・・・・」
紙の束に手が触れたが、鬼鮫が取り出したのはいのの店で買い求めた指輪の入った革袋だった。
牡蠣殻の首に手をかける。
「・・・また絞める気ですか?苦しいんですよ、これ」
「絞めませんよ。失礼」
丈高く首を覆う徳利襟を下ろし、情けない程細い首に鎖をかけて留める。
「・・・?何でしょう、これは?」
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