第25章 犬も喰わない・・・・
「どこ行くんですか?」
ドアの前に足を出し、鬼鮫は牡蠣殻の後ろ襟を捕まえた。
「焼肉屋ですよ、そう言ったじゃないですか。話をちゃんと聞いて下さい」
鬼鮫の足をガツンと蹴飛ばして、牡蠣殻がまた和やかに笑う。
「私はちゃんと話しましたよ?まだ何か?」
「そうですねえ、今度は私の話を聞いて貰いましょうか」
牡蠣殻の耳を引っ張り上げて、鬼鮫も和やかに言った。
「そこであなたの話を聞いていた事をわかって貰いましょうかね」
「解りやすくお願いしますよ。暴力もなしにして下さい?痛いですよ、コレ」
「努力しましょう」
鬼鮫は牡蠣殻の耳から手を離すと、指でちょいちょいと彼女を招き寄せた。牡蠣殻は迷ったものの、好奇心にまけて歩み寄る。
寝台の脇にあった麻袋から、瓶が二本現れる。
「あらら、お酒ですねえ・・・」
鬼鮫が取り出したそれを見て、牡蠣殻は首を傾げた。
「木の葉の酒屋で入手しておきました。あなたが釣れるかと思って・・・・いや、冗談ですよ?頷くのは止めなさい。その単純さが怖い」
「へえ・・・成る程・・・・木の葉の酒屋・・・」
「・・・これ呑んでいいですから、ちょっと落ち着きなさい。私にも話をさせなさい」
「・・・え?いいんですか?だって干柿さん怒ってるんじゃ・・・怒るとサービス良くなっちゃう人なんですか?変わってますねえ・・・そうですか・・・呑んでいい・・・。あらやだ、何かときめきますねえ・・・」
「・・・本っ当に怖いくらい簡単ですねえ・・・全く目放しならない・・・・」
「はい?何ですか?」