第25章 犬も喰わない・・・・
「失礼。悪い気で面白いと言った訳じゃないんですがね。興味深いという意味ですよ」
「話の内容は丸無視じゃないですか。話さなきゃ良かった。馬鹿馬鹿しい。勝手に一人で怒ってなさいよ。風呂で溺れて古代ローマに行っちまいなさい。金縛りにあって素敵がってなさい。誰にでも秘密があるって当たり前だっつの。今会いに行くとか言ってる暇に会いに行けよ。今日恋を始めますって明日じゃ駄目か?昨日は乗り気じゃなかったか?謝罪の王様ってそこは両立難しいよ?主婦と主夫の両立くらい難しいよ?宇宙兄弟って何だ?ギャラクシー街道の前日譚か?あ?僕らがいたってそりゃいなきゃ話になんないっつの。根源的なとこいきなり断定されてびっくりするわ。何の話でも僕らがいるわ。貞子だって呪怨だって僕らがいるわ。むしろ僕らがいない方が画期的だわ。冷静と情熱の間?普通に普通って言え。ややこしくすんな。君に届けって投げ槍にならないでちゃんと郵政局か宅配会社に頼め。念じても届かないわ。日本の郵送システムなめんな」
「・・・どうしました?内容無視でタイトルいじりとは、話を無視した私への当て付けですか?いや、無視してませんがね。ちゃんと聞いてましたよ。真面目に話すのがそんなにストレスだったんですか?ちょっとかなりびっくりしましたよ。大丈夫ですか?いきなりべらべら話し出すから何か憑いたのかと思いましたよ。まだ続きますか?いいですよ、続けて。妙に面白いですから。次は洋画編ですかね。トーキー縛りなんかどうでしょうね。好きなんですよ、トーキー。長くなっていいですから、今度は内容いじりで頼みますよ。座りなさい。呑みますか?勢いがついて面白くなるならどうぞ呑んで下さい」
「・・・ト、トーキー?蒸気船ウィリーやらマダムと女房やらについて語れと?・・・私、生憎トーキーは得手ではありません・・・」
「トーキーはトーキーでも蒸気船ウィリーはアニメでマダムと女房は邦画じゃないですか。いきなりマダムと女房って、あなた本当に変わってますねえ。モダン・タイムズとか恐喝とか他に有名どころが色々あるでしょう?」
「チャップリンやヒッチコックに突っ込み入れろって?トーキーで?」
「私がやりましょうか?」
「ええ!?本当に!?誠に!?そら凄いですねえ!!お一人でゆっくりどうぞ」
牡蠣殻は和やかに笑うと鬼鮫を横にどかしてドアノブに手をかけた。