第24章 It's foolish bird that own.
「はあ・・・?何なんです、お二方。何を言ってらっしゃるんだか、サッパリわかりませんねえ・・」
呆れ顔で二人を眺め、牡蠣殻は後退った。
「私、表で一服して来ます。後は二人でゆっくりどうぞ」
「では浮輪さん、一緒にどうぞ。話があるのでしょう?私はここで待っていますから」
「急かしますね。何ですか」
訝しむ波平に鬼鮫は至極当然のように答える。
「私はこの人を連れに来たのでね。用があるなら手短にすませて欲しいのですよ」
眉を上げた波平に鬼鮫は口角を上げた。
「これが私のやり方ですが、何か?」
「いや、待って下さい。私は行きませんよ?ほとぼりが覚めるまで韜晦するつもりです。色々考えたい事もある・・・」
牡蠣殻は更に後退って鬼鮫から距離をとった。
「薬師の言った事を気に病んでいるのか」
波平が茫洋と牡蠣殻を見た。
「あのとき話したかった。お前が考え込む前に。こうと決めるとお前はなかなか人の話を聞かないから」
波平は腰の鞄を探って、丁寧に綴じられた紙の束を二つ取り出した。鬼鮫は目を見開き、細めた。
"・・・成る程。あの女・・・"
杏可也の含みはこういう事だったのだ。しかし恐らくは杏可也の意に反して、波平はそれを躊躇なく牡蠣殻に差し出した。
「義兄さんから教わってはいるだろうが、改めて目を通したらいい。お前がまだ知らない事も記されていよう。持って行きなさい」
「・・・・・・」
牡蠣殻は禁忌である筈の書を見詰め、しばし黙考していたが首を振った。
「こういうものを持っていては反って危険です。お気持ちは嬉しいですが、頂く事は出来ません」
サバサバした様子で笑いながら、牡蠣殻は一度だけ、その紙の束に触れた。
「私は腕自慢ではありませんからね。何かの弾みでこの血を悪用するような相手に漬け込まれたとき、こういったものは悪意ある所業に拍車をかけるでしょう。危ない危ない。安心出来るところにあるのが一番です。さもなくば廃棄して頂きたい。・・・これは禁忌でしょう」
「散開するのだ。でなくとも今までの磯ではなくなる。今更禁忌でもあるまいよ」
腕組みして思案顔の鬼鮫の前で、波平は牡蠣殻の頭に手を載せた。
「雪渡りをお前に譲ろう。いつでも会いに来なさい。私の手で間に合うことならば貸してやろう」
「学舎時代からかわりませんね、この癖は。あまり有り難くない癖ですが」