第24章 It's foolish bird that own.
牡蠣殻はどこまでも牡蠣殻な訳だ。初見でも知己でも腹が立つ。
"・・・あの男"
牡蠣殻と揃って焼肉屋を指差す男を見て、鬼鮫は杏可也を思い浮かべた。一見似ては見えないが、読めない半眼。
"浮輪波平"
裳裾が木の葉の護衛を引き摺り、四人は店に入った。
鬼鮫も動いた。
波平は底の抜けたザルだが、牡蠣殻はザルである。
席についた二人はセットを丸無視していきなり一升瓶を注文した。無論品書きにそんなモノはない。
シカマルは頭を抱えた。
「義を見てせざるは勇無きなり。日本酒をみたら一升からです」
「天網恢恢疎にして漏らさず。呑むんだったら一斗酒。昼酒をコソコソ呑んだら罰が当たります」
「青は藍より出でて藍より青し。牛を食うなら先ずカルビ」
「・・・アンタら・・・・どっから突っ込んだらいいかわかんねえよ・・・。大体何で昼酒呑まなきゃねえ訳?何かお祝いか?」
「・・・お祝い?・・・・成る程、お祝いねえ・・・」
波平が温かい手拭いで手を拭きながら首を傾げた。
「まあどちらかと言えば別れの盃になるのでしょうかね。恐らく今日を以て磯は散開する事になると思われますので」
「散開?はあ?」
シカマルは目を見張って向かいに座る三人を見回した。藻裾が箸をかじりながら、
「色々あんだよ、色々さ。赤青黄色、緑に青、ん?青言ったか。じゃ紫だ。紫の君だ。大都芸能だ、紅天女だ!いつまでも信号は赤ではありませんことよ、なんつってな!!!そらそのうち青になんなきゃ信号の意味ねっつの!!!笑かすうゥ!!・・・バンビ丸、恐ろしいコ・・・!!にゃははははッ!」
「・・・何言ってんだ、コイツは・・・」
しかめ面のシカマルにメニューを繰っていた牡蠣殻が顔を上げた。
「こういうときの彼女は何も言っていないを言ってるんです。気にしないで下さい。何頼みます?」
「・・・腹いっぱいだっつってんのに、アンタは何も聞いてないを聞いてんだな?」
「ハハ、まあそう言わずに。折角の奢りですよ?一番安くない安いを頼んだらどうです?」
「一番高くない高いでも一向に構わないんだけどね」
割り箸を割りながら口を挟んできた波平を一顧だにせず、牡蠣殻はシカマルに笑顔で勧めた。
「奈良くん、黒毛和牛の五階級頼みなさい。お腹いっぱいでも話の種になるから」
「・・・待ちなさい、磯辺。税務局員を呼びつける気かな?」