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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第24章 It's foolish bird that own.


鬼鮫は木の葉の花屋にいた。
花屋に来たくて来た訳ではない。そんな事があろう筈もない。
通りかかったところを要りもしない花を買えと引き摺り込まれ、よく見れば相手は磯の護衛をしていたガキの一人で、あっちもここに来て漸く鬼鮫に気が付き、息を呑み、叫びかけるものだから、面倒になって削っておこうと鮫肌に手をかけた瞬間超音波にやられ、堪りかねて口を塞いだところ手を噛まれ、思わず頭上に手刀を落としたら、
「いったァ~!」
思いの外緊張感のない声を浴びせられて脱力。今ここ、という状況である。
「・・・アンタ、木の葉に何しに来たの?」
自分で引き摺り込んでおきながら警戒心全開にしている相手、山中いのに、鬼鮫は呆れ返った。
「それは私があなたに聞きたいところなんですがね?あなた私に何をさせにこんなところに引き摺り込んだんです?正直迷惑なんですがね。行ってもいいですか?それとも殺した方がいいですか?」
いのは小さく息を呑む。カブトとやりあっていた姿が思い出されて後ろに下がらすにいられないが、花だらけの狭い店内ではそれもままならない。足が震えた。
「・・・木の葉に何しに来たのよ?」
気力を奮い起こし、重ねて尋ねる。鬼鮫は遠慮のない大きな溜め息を吐いて辺りを見回した。
「何って少なくとも花を買いに来たんじゃありませんねえ。木の葉に害意があって足を運んだわけでもありません。面倒なやり取りは御免なので先に言って置きますが、あなた程度の相手を謀る必要もないのですから、努々聞き返したり疑ったりしないように」
「アンタ・・・」
「アンタ、ですか?」
見上げるような相手に睥睨され、いのは縮こまった。
「あなた、でした。ハイ」
「全く馬鹿馬鹿しい」
言い捨てて店を出ようとした鬼鮫は外から入ってきた娘達に押し返された。
「いの、新しい売り物って何?もう入ったんでしょ?」
「・・・こんにちは・・・」
桜色の髪のチャキチャキした娘と、おどおどと大人しそうな娘が鬼鮫に頓着なく店内に入り込んで来た。
「・・・サ、サクラ、ヒナタ・・・」
いのは口をパクパクさせて鬼鮫を指差し、声を出さずに意思を伝えようと必死になったが、鬼鮫に睨み付けられてまた縮こまった。
「・・・あ、これ・・・?」
おどおどと花の群れの一角を指して大人しげな娘が首を傾げた。
「・・・何?これ?ちょっと渋すぎない?」


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