第22章 取り敢えずの円団と屈託のある別れ
「またえらい事言い出しますね。よくよく思い出して下さい?私は留守も預かれない決壊したダムのような頭をした人間ですよ?貴方自身のご指摘ですがよもやお忘れじゃないですよね?そんな私に人を躾るなんて立派な真似が出来る筈もないでしょう。煙突の天辺に載っかった頭じゃカッカするのも無理はないでしょうが、強いて頭を冷やして下さい」
「・・・ほう。面白い事言いますね。全く失言にかけてはあなたと深水さん程の人を見た事がない。一体何を教え教えられたのか、師弟という言葉の広意義さには当惑するばかりですよ、あなた達を見ていると」
「資源の少ない私ですからね、そんな事を言われてもぜーんぜんサッパリ解りません。いずれにせよ、私をあてにしないとは貴方自身のお言葉ですよ?今更無理を言わないで下さいよ」
「限られた資源を有効に活用するいい機会ですよ。死力を尽くしなさい」
「私の些細な資源では汲めども尽きぬ彼女の機知を留める術もありません。活用しようと思うだけで資源が枯渇する勢いですよ」
「そんな事で枯渇する程度の資源なら、さっさと枯渇させた方が後生がいいでしょう。あなたの脳はコンビニのおでんについてくる芥子並みに些少なんですねえ・・・」
「そうですよ。干柿さんはコンビニの芥子一つで大根一本食べられますか?それくらい無理難題という話です」
「私は大根を一本食べようとも思わないし、増してそれに満遍なく芥子を塗り付けるような嗜好は持ち合わせてませんよ。何ですか、その発想は。あなたは大根一本食べられるんですか?」
「え?」
「・・・え?って何です。は?まさか食べるんですか?大根を?一本?」
ここで藻裾が何故か嬉しそうに口を挟んできた。
「牡蠣殻さんは酒さえありゃおでんで大根三本は行っちゃいますよ?芥子に唐辛子かけて、あッつくてかッらいのすうすう平らげんスよ。なめちゃいけません、アニさん。この人好きなものならイナゴみたいに平らげますからね」
「そう言えば牡蠣殻さんは白米がわりに豆腐を食べる様な人でしたね。・・・因みにその豆腐はどれくらい食べるんですか?」
鬼鮫の問いに牡蠣殻は厭な顔をしてしぶしぶ答える。
「いや取り立てて・・・一食に一丁・・・」
「・・・酒に冷奴か湯豆腐ならどうなるんです?」
「・・・奴なら三、湯豆腐なら五・・・?」
「・・・何ですか、その出家した甲斐もない間抜けた坊主の様な食生活は」