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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第22章 取り敢えずの円団と屈託のある別れ


「・・・・・・」
我愛羅がデイダラに向かって足を踏み出した。お、と、身構えたデイダラの手をとり、こっくりと頷く。
「その通りだ。お前は美しさというものをよくわかっている」
「お?おう、何せオイラ、芸術家だからな、うん」
面食らいつつ満更でないデイダラに鬼鮫が呆れた目を向けている。
「・・・何だよ、何か文句あんのか?」
「・・・いえ別に。世の中は多種多様な人間の集まりですからね、ええ、いいと思いますよ」
「どういう意味だ、うん?」
「さあ、あなたが思ったような意味じゃないですかね。いいんじゃないですか、それで」
「芸術家か。成る程。流石の審美眼だ。いずれ俺もお前の作品を譲り受けたいものだ。精進して良いモノを造ってくれ」
「ん?まあそりゃ構わねえけどな、安かないぞ、オイラの芸術は。・・・何で笑ってンだよ、イタチ。うん?」
胸を張ったデイダラは、拳を口に当てて咳払いするイタチを睨みつけた。イタチは拳を退けると、まだ僅かに口角の上がる顔を真面目に取り繕ったが、
「笑っていたか?・・・いや、笑っていたな。すまん。他意はない」
言う端からまた微笑した。
「会うたびに真っ赤ッかになってますねェ。マジくたばっちまいますよ、牡蠣殻さん」
皆の後方、大きな木の根本にいつの間にかひっそりと腰かけて最後の煙草を吸っていた牡蠣殻の隣に、呆れ顔の藻裾が座った。
「何なんスか、血だらけであちこちポチポチ傷だらけ。蟋蟀にでも襲われたンスか?」
「聊斎志異か。早く返しなさいよ、汐田さん。あれ持ってってもう半年?図書館戦争勃発ですよ」
「あは、アレ、移動ンとき置いてきちまいましたン」
「・・・何なら特攻しかけますよ。丁寧な仕事しますよ、21型で。喧嘩売ってンですか、貴女。ああ、もういい。あげますから回収して大事にして下さい」
疲れた顔で力なく言いながら、牡蠣殻は深水と杏可也を眺めた。
「許されたんですよね?」
「デグが出て深水のオッサンが動いたんだから許したンじゃないスか?」
気楽に言って藻裾は大欠伸する。
「早く戻って飯だ飯。腹ペコですよ、ホント。腹減ると口数も減っちゃって我ながら詰まんねえわ」
「成る程、比較的まともに話しているのはそういう訳ですか」
「いやー、ご心配なく。飯食ったらいつも通り、元気なあなたの藻裾が戻って来ますからねー!」
「戻って要りません。今くらいでいいですから」
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