第20章 性の合わない真面目が二人
「否めないな。俺は馬鹿ではないが。・・・で、そこの二人は何をしているんだ?気が合わないならアイコンタクトで話を進めようなどと思わない事だな。それと、人の話はちゃんと聞け。話した方が殺意を抱く」
「そうか」
イタチが目が覚めたような顔で深水を見た。
「気が合わないのか。だから上手く事が進まないのだな・・・しかし何故気が合わない?」
「嫌われてっからだろうよ」
傀儡の部品が積まれた卓の上に千枚通しを投げ出して、サソリが呆れた声で言う。
「・・・嫌われている?誰が?俺は深水さんを嫌ってはいないぞ。好いてもいないが」
「・・・微妙に失敬な物言いをなさいますな」
深水が呟く。
「・・・イタチよ、お前は見目も頭もいい男だが、いささか天然の気がある。自覚しろ。話が進まない」
角都は疲れたように額から顔を撫で下ろして卓についた。
「フカもいい年をして後進の者を嫌うものではない。まして今お前はイタチに護衛を依頼している身だろう。わきまえろ。分別のない中年男は妻女に三行半を突き付けられるぞ」
深水が見るからに悲痛な表情を浮かべたのに、サソリがククッと笑った。
「もう一度いう。バラバラに移動しろ。各自という事だぞ?断っておくが、こう見えて俺は非常に腹を立てている。次に揃って暁に現れたら、そこがホラーナイト開催中の部屋であろうと、即座に殴り込んでお前達を圧害の朝飯にしてやるからな。三つ数えたらフカ、十数えたらイタチだ。砂の国境北、目印は何だ?」
イタチが腕を組んだ。
「それが判りづらいと言うのだ。だからこそ揃って移動しているのだが・・・」
「それで三・・・・・」
深水が消えた。
「・・・・・・・」
残された三人は一時シンとなったが、間もなく角都が言いかけて閉ざした口を開いた。
「・・・回目に俺の寝台に現れた訳だな。しかしあれは本当に教師で医者なのか?だとしたら今までに排出した犠牲者の数は知れたものではないな・・・」
「いく先々でやらかしてンだろうよ。行けよ、イタチ」
「・・・迷惑をかけた。後で団子をおごる」
イタチも消えた。
「・・・団子かよ。この上嫌がらせか?俺ァ食えねえっての」
「天然だからな。悪気はないから始末が悪い。しかし真面目で天然が二人揃うと、いくら頭が良かろうともロクな事にならないのだな・・・」
「しょーもねー勉強になったな。テメエもとっとと部屋に戻れよ」