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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第2章 遂行しづらい任務


鬼鮫は依頼書をイタチに返して足を組んだ。
「交渉人の協力を以て難病人に治療を施したい音忍って、これ、カブトでしょう」
「本人が出て来るかどうかはわからないが・・・」
「て事は、多かれ少なかれ大蛇丸が絡んでくる。腰抜けの磯の連中じゃ相手になりゃしませんよ。護衛の依頼なんて見え透いた真似しないで、ハナからあっさり引き渡せばいいものを・・・」
お陰で関わってしまった。
鬼鮫は息を吐いて客もまばらになった食堂を見回した。
「これじゃ遂行したところで報酬が出るかどうかも怪しいもんですよ」
「出すだろう。磯の矜持だ。里の存続が第一だが、個人の意思を尊重し、自分たちに出来る限りの事はする」
「本人はどういう相手と何の交渉をするのかわかってるんですかね?生きて帰っても死んでしまっても構わない立場にいることも」
「さあな」
「知らないなら個人の意思の尊重なんかないでしょう」
「護衛を断る自由がある」
「成る程・・・積極的に死ぬ自由ですね。それで自分たちに出来る事っていうのがこの破格の報酬って訳ですか。興味深い人たちですねえ・・・」
何を以て取り引きするのかまでは、依頼書には無論明記されていない。護衛がそこまで知る必要はないからだ。
「・・・面白くないですねえ・・」
鬼鮫は食堂の入り口ー帳場の方へ目を向けて顎を撫でた。
「これじゃどっちに転んでも道化ですよ」
「金で動いている時点で道化以外の何者でもない」
イタチの言葉に鬼鮫は愉しげに笑った。
「しかし重ねて道化る必要もないでしょう」
「道化は道化だ」
「ふ。あなたのそういうところ、嫌いじゃないですがね」
「やけにひっかかるな、鬼鮫。何かあったのか」
「何かあったかというなら、ええ、まあ、牡蠣殻さんと会いましたよ」
イタチの眉がピクリと上がる。
「もめたのか」
「いえ、世間話をしましたよ。普通に」
「・・・そうか」
あっさり言われてイタチはいささか拍子抜けした様子で頷いた。昨日の今日だというのにどうしたのかとは思うが、敢えて尋ねる事はしない。
「良かったな」
「さあ、どうでしょうねえ・・・」
鬼鮫はまた帳場の方へ目を向け、曖昧に受け流して立ち上がった。
「まあ、今日はぼんやり過ごしますよ。今出来る事はないようですから。ご用の際は帳場前の微小なホールにどうぞ。恐らくそこに一日います」
「・・・わかった」
「失礼します」
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