第19章 降り落ちる災難
「ダラダラさん!」
「・・・アンタは凄く綺麗だけど、やっぱアイツや牡蠣殻の仲間だな、うん。問題を感じるぞ」
言いながらも、デイダラは藻裾の落ちた辺りを旋回して、人影を目視し続けた。
眼下は気の生い茂る山だ。砂の国境に入っている。デイダラは舌打ちした。
「どこまで仕様がねえんだ、アンタんとこのクロハラハムスターは。ちゃんと躾けろちゃんと!降りるぞ、つかまれ!」
カンクロウは機嫌を損ねていた。
「俺は昼までここらへんで仕事してたんだぞ?何でこの夜中にこんなとこに戻んねえとねえの?大体ここらへんは験が悪いじゃん。やってらんねえよ!」
「この夜中だから俺も出て来れたんだ。騒ぐなカンクロウ」
静謐とした表情で辺りを見回し、我愛羅がカンクロウを諌めた。年若く物静かなこのカンクロウの弟は、砂の里で影を務める要人だ。昼は職務に追われて政務室からなかなか離れられない。
「山に入るのは久しぶりだな・・・」
「こっちは一日もたたねえうちにまた山ン中じゃん。たく、化けが出ても知らねえぞ。出んだからな、ここらへんは」
「・・・出る?何がだ?」
「だから化けって言ってんじゃん。人の話を聞けってんじゃん」
「化けとは幽的の事か?面白い呼び方をするのだな・・・」
「・・・何でそういう古い言葉を使うの、お前は。年寄りくせェじゃん」
「・・・じゃんじゃん言っていれば若いというものでもないだろう」
「何その言い方。ガッツリ喧嘩売ってんじゃん?やるか、コラ」
「やるもやらないもやる訳がない。ここへは喧嘩しに来たのではない」
「・・・頭来んな。はあー帰りてえじゃん!」
「叔母上の前でそういう態度はとるな。失礼だぞ」
「元叔母さんだろ、元。あのふわーっとした人な。今更砂に何の用があるっての?しかも夜中によ?訳わかんねえじゃん」
「色々事情がお有りなのだ。文句を言うな」
「愚痴くらい言わせろってんじゃん。俺は疲れてんじゃん!この上化けなんか出て来てみろ、目の前で過労死してやんじゃん。労災高くつくぞ、払えよ風影」
「・・・お前やテマリには風影と呼ばれたくない・・・」
「いいから!今いいから、そういうの!謝るから止めて。マジ空気読めじゃん?」
「・・・孤独だ・・・」
「ちょ、何その小芝居・・・何浮かれちゃってんの、我愛羅」
「叔母上に会うのが楽しみだ」
「へ?」
「あの人を見ていると心が落ち着く・・・」