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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第16章 八面六臂


「昔っからこんな感じだからね、この人」
カカシが眼尻を下げて苦笑した。
「でもまあ、あてにならない訳じゃないから行って治療した方がいいよ。早く止血しないとね。ーとは言え・・・」
「手当て出来る当の医者は行方不明なんだよなァ」
アスマがカブトを見据えて続きを引き取る。
カブトはクッと口角を上げた。
「猿芝居は止めて欲しいですね。これだけ面子が揃って知らぬ存ぜぬという事はないでしょう」
「磯の医者が何処へ行ったかなんて、いちいち知る訳ないでしょ。こっちは木の葉の人間なんだから」
カカシは肩をすくめてアスマと紅を見た。二人は揃って肯定の顔色を浮かべる。
「・・・・ほぉん・・・」
黙って成り行きを見ていた飛段が、太刀を収めて牡蠣殻を見下ろした。
「だとよ。どォする?牡蠣殻?死のうが生きようがどっちみちアンタにゃ来て貰うけどな。それが仕事だしよ。アンタから報酬も貰わなきゃねえ。ま、そりゃデイダラの首尾次第だけどな」
「君たちのところにいるのか、深水は」
カブトが食いついた。
「いねえ。俺ァ嘘は吐かねぇ。いねえよ。なあ、牡蠣殻」
牡蠣殻は飛段の方を見ず、僅かに目を細めて頷いた。
デイダラと飛段がここに現れたという事は、深水は今イタチと鬼鮫に守られているに違いない。あの二人なら間違いなく深水と杏可也を逃げ伸ばしてくれるだろう。
「デグが着いた」
深水が動く。察した波平が補足する。
「深水は放逐しました。里の重要機密に等しい事項を個人的に持ち出した廉で本来なら厳罰に処するべきところですが、本人不在に加えて彼自身がこれまで里の為に実直に積み上げてきた功績を鑑みての仕儀です。単刀直入に言って、所払い。まあそもそも磯には所など在りませんが、今後私達と居る彼を見る事はないでしょう」
カブトに顔を向け、その目をヒタリと見据えた。
「この件に関しては、薬師さん、あなたも何か一言あるんじゃないですかね?」
「何が言いたいんです。はっきり言って下さいよ」
カブトはフードを被って薄く笑った。
「おい」
様子を見ていた飛段が牡蠣殻の袖をそれとなく引いて顎をしゃくった。
「ここはもういい。いくぞ」
「は?しかし・・・」
「さっきはああ言ったけどよ。死んじまったアンタを担いでったら面倒な事になる。・・・顔色悪ィぞ、そろそろヤバいんじゃねえのか?」
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