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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第2章 遂行しづらい任務


「人をさがしているのですよ。あ、いや、待ち合わせてる?どうだろう」
「・・・自分のしている事もはっきりしないんですか。重症ですねえ」
「ハハ。見ず知らずの相手なので、さあ、見つけられるかどうか・・・」
「また茫洋とした目的で逗留しているのですねえ。あなたらしい」
「上から言われた事なので仕方ありません。まあ私も、仕事をしていると言えば仕事をしているのですよ、一応」
「何の仕事なんだか・・・」
鬼鮫は呆れ顔で無意識に牡蠣殻の横に腰を
下ろした。
牡蠣殻は驚いた顔をして身を引き、鬼鮫の横顔に目を走らせたが、何も言わずに懐から煙草を取り出した。 眉をひそめる鬼鮫に苦笑して、
「煙草はお嫌いみたいですね」
「好きも嫌いもありませんねえ。興味がない
ので。しかしあなたには随分と不似合いです
よ、それは」
「似合うも似合わないも、それこそないで
しょう。煙草は嗜好品で装飾品ではないのですから。お嫌なら控えますが、吸ってもよろしいでしょうか」
「お好きにどうぞ」
「ありがとうございます」
礼を言って、牡蠣殻は慣れた手付きでマッチを擦った。
硫黄が匂って、昨日は気付かなかった栗の香りが漂って来る。
「栗の匂いがしますね。珍しい煙草をお吸いだ」
鬼鮫の指摘に牡蠣殻は煙草を口から離して頷いた。
「山の煙草ですよ。珍しいですか?」
「山里の方でしたか。成る程それらしく変わった名前だ。カキガラは果実の柿を書くのでしょう?」
鬼鮫の質問に牡蠣殻は困った顔をした。
「いえ、私のカキは海の牡蠣です。在所は、山・・・ではないですねえ・・・。どこと行ったらいいのかな・・・。ちょっと説明に困りますねえ・・・」
訳のわからない事を言って首を捻る。
「ところで干柿さん、どこかへお出かけだったのでは?お仕事はいいんですか?」
「ああ、仕事、ですか・・・」
鬼鮫はフと思い当たって、牡蠣殻をまじまじと見詰めた。
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