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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第16章 八面六臂


「おいコラ、あんま見ンな。杏可也さんが減ってちっさくなるわ。何処行くんだって聞かれてんですよォ?答えろっての」
無粋な藻裾の横槍にデイダラは顔をしかめた。
「何処に行きゃいんだ?アンタに聞けって言われて来たんだけど?」
尋ね返すと、杏可也はフと首を傾げた。
「先程榛色の粘土の鳥を飛ばしていましたがあれは木偶の坊を模したのでしょうか?よく似ていたので気になりました。賢い伝書鳩なのですが・・・あのコ、旦那様のところへは着いたのかしら・・・」
「アイツ、木偶の坊ってのか。ああ、そいつが来たからオイラ達が出張ったんだ。伝書の内容まではわかんねえけど」
「そこに砂の国境の北に向かって下さるよう書いてあるのですが・・・」
「よし。砂の北だな。目印はあんのか?」
「近くまで行ったら教えます。暗いので少し分かり辛いかもしれません」
「今日は月夜だ。何て事ねえよ、うん」
心持ち柔らかい物腰で話すデイダラを横目に、藻裾はニヤニヤした。
「や~ん、甘酸っぱ~。ボクくん、フカのおいちゃんにブッ飛ばされちゃうよオ?おいちゃんあんでて強いかんねえ?」
「あん?何だテメエ、まだ乗っかってたのか?いいぞ、降りて。うん?」
「こっから降りんの?この高さから?・・・面白そうだな・・・」
「おいおい。おっかねえな、アンタ。いいから乗ってろ。この高さから飛び降りたら、流石のアンタもおっ死ぬぞ、うん」
デイダラは呆れ顔で藻裾を諌めた。藻裾はげらげら笑った。
「真に受けんなヨ?やんないって」
このデイダラの諫言、間もなく俄然深刻なものになるのだが、今はまだ誰もそれを知らない。

「おらああぁぁァァ!!!」
クナイは中距離戦に持ち込んでしまえば刀身が短か過ぎ、太刀相手には分が悪い。吹き矢など言わずもがな。
しかし飛段にはセオリーなど無い。
敵方の懐に飛び込んでクナイを持つ手を押さえ付け、その肩口に太刀を突き上げた。
「ダァハッ、ハッハァッ」
細い刀身は覆面の男の肩へ穿つように呑み込まれ、貫通する。勢い良く引き抜くとパッと鮮血が噴いた。押さえ付けた手をそのまま力任せに引き付けて男を脇に転がすと背中から急所を突く。
「はッはァッ、まだまだああアアァ!」
左から飛んできたクナイを身を沈めて避け、倒れた男のクナイを拾い上げると腕を大きく振るって牡蠣殻へ小太刀を振るう男の目掛けて放った。


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