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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第16章 八面六臂


藻裾を置いて本気で飛び立ちかける。
「ちょ、こら、ホントに置いてくんじゃねェぞ、おい!肝っ玉のちっさい男だな!」
「アンタに付き合いきれるだけデケエ肝っ玉持ってるようなヤツはテメエの肝っ玉で圧死すんのがオチだ。たく、オイラも人がいいよな、くそッ、さっさと乗れ!!」
「始めッからそうしろっつの。メンドクセェな、ヘボヤンはよ」
「藻裾、いい加減にしなさい。仏の顔も三度までですよ」
「・・・三度?どういうカウントで三度?両手両足使って隣近所総出で数えてもおっつかないくらいやられちまってんだけど、この仏。三度とかねえから。マジでカウント甘過ぎだぞ」
デイダラは暗い顔でブツブツ言いながら、懐に手を突っ込んだ。
「グズグズして下手践んだら鮫とフカに食われちまう。それでなくても牡蠣殻を置いて来ちまったんだ」
藪からワッと、あの霧のような赤い吹き矢の群れが涌き出た。藻裾はハッと杏可也を庇った。
「目ェ潰すなよ!」
それを尻目に懐から取り出した手を大きく振って起爆粘土を放ち、デイダラは印を結んで口の両端を吊り上げた。
濃い榛色の鳥が霧にぶつかり、閃光と共に弾けた。白い光が目を射る。爆音と爆風が巻き起こって霧は霧散した。
「おら、もう一丁ッ!」
袖口に腕を潜らせて三羽の雀をつかみだすと、今度は上に放り投げる。片手で印を結ぶと雀は三ヶ所に散り、そこでほどけるように何本もの光の筋になって藪の中に降り注いだ。
「うわ・・・ッ」
藪が内側から閃光を洩らし、次いで燃え上がる。覆面の男が飛び出してきた。吹筒を構えている。
「よし、三弾目・・・あ、おいッ!」
再び懐に手を入れたデイダラの横から、藻裾が飛び上がった。
「いい加減に、しやがれ、この死に体ヤローがああァァァァ!!!」
吹筒の標準が追って来るのにも拘らず、片足を高く上げて、勢いよく降り下ろす。その足にまるで引っ張られる様に急降下して、藻裾は男の頭上に恐ろしい勢いで踵落としを決めた。
「速ェ・・・」
思わず目を見張ったデイダラに、杏可也がおっとりと答える。
「あのコの靴には鉛が仕込んでありますからね」
「鉛ィ?バッカじゃねえの!?何だソレ」
倒れ混んだ男の背中を踏みつけて、藻裾がまた吠える。
「人の連れの大事な血ィ、いつまでも悪戯に使ってンじゃねえぞ、クソッタレがァ!!」
「おいッ、後ろ・・・・!!」



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