第14章 汐田藻裾
「うかうかとこんなところまで出張られて正直迷惑ですよ。干柿さんも何考えてんだか・・・話がややこしくなりました。仕方ないですね。頭に来る。二重契約で行きましょう」
「はん?」
「杏可也さんを連れ出したい。どうせ来てしまったのなら役に立って下さいよ。杏可也さんと先生が合流なされたなら、何の問題もなく暁に行けます」
「ふうん・・・。報酬はこっちの言い値で構わねえな?交渉してる余裕はねえだろ?」
「私にそれが払えると踏んでの言い値なら呑みましょう。それに違いないとは思いますが、見込み違いなら話は難しくなりますね」
「わかってんじゃん。問題ねえな。交渉成立だ」
飛段は牡蠣殻の肩に腕を載せてその顔を見た。
「言っとくけどな、俺ァうかうかと逃げ出させたりしねえから。一遍磯ォ襲って懲りてっからよ。アンタらが逃げ出そうとしたら頑張って襲いかかっちゃうよ?ちょーっと力が入りすぎて殺しちゃったら、そんときはゴメンなァ?気ィ失わせるか殺すかしねえと、すーぐいなくなっちゃうからさあ、アンタら」
「こちらにも目的があるのです。無闇に逃げ出しません」
「あそ。で、どうすんの?杏可也ってヤツはどこよ?あんま時間ねえよ?里の外で大蛇丸の腰巾着がコソコソしてたから。あっちもこっちに気付いたかなァ?何せデイダラの飛行用の土塊はでっけえからなあ。あんなバカデカイ鳥見て警戒しねえ間抜けはいねえ」
目をすがめて再び木の葉を取り囲む遠景を眺めやり、飛段は肩をすくめる。
牡蠣殻はデイダラと揉めている藻裾を振り返った。
「汐田さん。手を貸して下さい」
「だァら、チビとハゲはもともとおンなじ語源なのよオ?そすっと、どっちかってと男向けの罵り言葉になるっしょ。女はそオそオ禿げません~。ハイ、テメエチビ決定。アタシよかチビに決定~!おめでとう!ありがとう!賞品は何だァ?シークレットブーツかあァ?ダハハハ!」
「ハゲ今関係ねえだろ?バッカじゃねえの?マジテメエのがちっちぇのに何でオイラがチビになんのかわかんねェ。アンタオイラよか頭一つちっちぇじゃねえかよ。フツーにアンタがチビだろ?ハゲとか言い出すしホント訳わかんねえな、アンタ。うん」
「バァカ、ジュンク堂言って語源辞典買って来いデスよ。買う金なかったら立ち読みして来い。てかわかった。メンドくせえ。腹減った。アタシがチビ。テメエはツビ。決定、終了、ハイ解散」