第14章 汐田藻裾
「・・・何この面白え女?デイダラの姉ちゃん?」
「ぶッ!何でいきなりそうなんだ?他にも何かあんだろ?何でまずそう来んの?ほんっとバカの考えつく事ってわっかんねえな!」
「ぷぷ、姉ちゃんだって。やっぱチビだから弟くんにしか見えねえんですよ!」
「何嬉しそうな顔してんだ?言っとくけどな、コイツ、バカだから!バカの言う事真に受けて喜んじゃって、くっだらねェな!」
「あ~、そう?わかったわかった。ボクくん、お姉ちゃんたち忙しいから。ね。もオね、お姉ちゃん腹減って電池切れ起こしそうなの。頭からバリバリ食っちまうよオ?いいよね?」
言い合うデイダラと藻裾を横目に飛段は牡蠣殻の頭に載せていた腕を懐手し、木の葉を囲む山や丘を眺め回した。
「あんまりいい感じじゃねえなあ」
「え?」
「お前らみたくスベッと消えられねえからよ、こちとら。どっかに動くとなると、色々見ちゃったりする訳よ。見られちゃったりもするしさあ」
首の後ろに手をあてて、飛段は口角を上げた。
「まあいいや。で?フカの嫁さんはどうすんの?啖呵切った割りに仕事おせえなあ、牡蠣殻ァ?悪ィけどお遊びは終わりだ。早ェとこアジトへ戻っからな。来い」
「行きませんよ。何言ってるんですか」
牡蠣殻が飛段から離れた。
「横槍を入れないで下さいよ。そもそも何故あそこに戻るのが前提なのかがわからないですね。何せ私は磯の者ですよ?今はここにいるのが当然でしょう」
飛段はにやりとして顔を上げた。
「わかってっかなあ?今の俺らの依頼主は鬼鮫な訳よ。アイツが連れて来いったら、連れてかなきゃなんねえのよ」
「それは私の預かり知らない事です。あの人をさえ振り払ったのに、貴方たちの話を易々と聞くと思っておられる?安く見られたものですねえ」
「安いよりゃ高い方がうちの相方が喜ぶんだけどな。安くたっていいぜ、高く買う相手さえいりゃあよ」
「値踏まれるとは全く情けない。いくら高くても値がつけられた時点でガラクタですよ」
「いいじゃねえかよ。買おうってヤツがいんならよ。お前案外食えねえな。もォちっと扱い易いかと思ってたんだけどなァ」
「・・・デグは・・」
「あ?」
「伝書は着きましたか?」
「鳩ォ?どうだったっけかなァ・・・」
「・・・・そうですか」
牡蠣殻は一瞬ぼんやりと考え込み、額の後れ毛を掻きあげて顔を上げた。