第14章 汐田藻裾
「そこは譲れないんですね」
「いくら牡蠣殻さんでもこれは譲れません」
「いや、全然譲っていらないけれども」
「またまた、妬みの熱い血潮を感じますよオ?自分も斯くありたい的なァ!」
「確かに貴女の様に突き抜けられればと思う事もありますよ」
「ほォらね!いいですよォ、牡蠣殻さんなら特別に末席を汚す事を許しちゃう!どんどん汚しちゃって!」
「後八巡りも生き直して良い事が一つもなかったら汐田色に染まらせて貰いましょうか。それだけ生きて良い事の一つもなければ、阿蘇山の火口が温水プールに見えるくらいには自暴自棄になってるでしょうしね。汐田節と経典の別もつかなくなっているでしょう」
「先なげェなァ!おい!」
「長いですね。まあ要はありませんよと言ってるんですが、どうせ聞く耳持たな・・・」
「待ちますよおオォォ!私ィ、必ず戻るって信じてますうゥゥ~!とかっつって旦那の教え子とデキてんじゃねェよ!ちくしょオ、テメエらンちに特攻すっぞ、永遠のオォ、ゼエェロオォォォ!!!」
「止めろ。その話は止めろ。勘弁し・・・」
「僕はァ必ず、必ず戻りますうゥゥ!永遠のオォ、ゼエェロオォォォ!!!」
「宮部さあァァん!牡蠣殻と21型で日本に帰りましょおぉォ!!!」
「来た来た来たあァァ!牡蠣殻さん大好きィ!」
「嫁ンち直行で絨毯攻撃だァ!!ペンペン草も残さねえ!!!」
「ヒョオォォ、サイッコォ~」
「牡蠣殻!何やってンだ、コラ」
「わあ!ごめんなさい!」
「何言ってんだ?取り合えず生きてんな?うん、よし、戻っぞ、来い」
あまり面識のない芸術家がいる。世の中でも相当面倒な部類に入るだろう、面識の足りていない芸術家。
牡蠣殻はリアクションの引き出しをそっと閉めて、デイダラを凝視した。
「わかりますよ?わかりますけど、どちら様?貴方ここで何やってるんです?」
デイダラはムッとして口をひん曲げたが、気を取り直して両手を腰に当てた。
「お前あのサディスト相手に啖呵切って、わざわざ木の葉まで遊びに来たのか?うん?いい度胸だよな。何だ、そっちのチビは?友達か?悪ィけど、コイツと遊ぶのはまた今度な。こっちは大事な用があんだ」
「あぁ?誰がチビだ?なンですよ牡蠣殻さん、このチンチクリンは?チビがチビって言ってますよオ。笑えるぅ~」
「何だ?喧嘩売ってンのか?うん?チビにチビっつって何が悪ィよ、え?チビ」