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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第14章 汐田藻裾


「あー、腹減った腹減った腹が減りましたよオ」
客舎の食堂で藻裾が騒いでいる。
任務から戻るなりぐっすり寝込んだ彼女はつい先程目を覚まし、片付けを終えて帰るばかりになっていた職員を捕まえて激しく夕餉の要求をした。
普通の人間が藻裾の激しい要求をはね除けられる筈もない。運のない職員はビクビクしながら再び夕飯の支度をする羽目になった。
「はあー、波平様も気がききませんねえ。呑み行くなら誘えっての。福利厚生がなってねえ。あ、おいごらオバチャン、おひたしなんか付けてんじゃねえですよ。菜っ葉なんか要らねえから肉肉肉!ミートラッブゥ~!あ?今日は魚だ?知らねえですよ、肉ったら肉!あと飯大盛!チョモランマカマアァーン!」
「止めなさい。人に迷惑をかける様な余力はフリントで使いなさいと言ったでしょう。悪を一掃して来なさい。ついでに一掃されて来なさい」
「やあぁん、KING810新メンバーにしてえェェ・・・あン?牡蠣殻さん?」
唐突に現れて目の前の椅子に座り、お茶へ手を伸ばした相手に藻裾はスタンバイしていた箸を取り落とした。
牡蠣殻は何処で何をしていたのか、赤く充血した顔をしかめてお茶をすすっている。どうやら口の中が切れているらしい。
「こんなとこで何してんですか!ガンガン探したんですよ!あ、ちょっとそのお茶温いですから!今あっついの頼みますから!あっつうぅぅいヤツ!」
「頼むから止めて下さい。今は温いのが有り難いんですよ、や、待って、ホント止めて。来ても呑まないから。てか呑めないから」
「遠慮しないで下さいよオ。しっかし顔あっかいですねえ。どっかのカエル伍長みてェスよ!共鳴いっちゃいます?共鳴~ギャハハ~。てゆうかァ、フラフラ出歩いてんじゃねぇですよ、このオイスターソース」
「あれかけると何でもそれなりに美味しくなりますね」
「なりますねじゃねぇですよ、こっちゃマジ鶏ガラ探して三千里だったっつの」
「中華ですね」
「そォそォ、ジャジャッと炒めちゃってねえェって、そうじゃねぇでしょ!波平様には会ったんスか」
「客舎にいると思って来たのですが、居たのは貴女でしたね、汐田さん」
「汐田なんて水臭ェですよオ、モッソって呼んで下さい、モッソって!コールミー!」
「厭ですよ。何ですかその突っ込みどころ満載の要求は」
「なァんでかなあァ、誰も呼んでくんねェんですよ、イケてんのにィ」

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