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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第13章 干柿と牡蠣殻


「よぉ晩飯ってどうなんの?何かゴタゴタしちゃってるけどやっぱ各自な訳?お客があんだから寿司なんかとっちゃったりしねえかな。穴子食いてえな、俺」
「自分で言うのも何だが、四六時中金の話ばかりする俺のような人間の横にいてよくそういう能天気な発想が出来るものだな」
「あ?寿司旨ぇだろ。角都は寿司嫌いかよ?珍しいな、オメエが好き嫌い言うなんて」
「今の話のどこをどうとれば寿司が嫌いだという話になる。お前はもう生涯ネギだけ食っていろ。終わらない生涯をネギで彩り続けろ」
「ネギなあ。嫌いじゃねえけどそればっか食うほど好きでもねえんだよ」
「味噌でもつけてかじっていろ。慣れる頃には少しは賢くなっているかも知れない・・・」
「じゃ角都もやるか、ネギ健康法っての?角都もよ、どうせ死なねェんだから思考機能の低下ってヤツにネギが効くかどうか、試してみたらいんじゃねえ?」
「誰が健康法の話をした。俺の思考機能についてお前まで口を出すな。もういい、寿司でも何でも好きなものを食え」
「お?奢りか?」
「夢見勝ちな事を言う暇があったらフロムエーでも読んだらどうだ」
「何だよ、まずテメエが読んだらいいだろ」
「俺は今シルバー人材派遣センターへの登録を検討しているところだ」
「え、ちょ、マジ?おじいちゃん・・・勘弁してよ・・・」
不毛かつ堅実な会話を交わしながら二人は遠ざかって行った。
声と足音が聞こえなくなったところで、牡蠣殻がドアノブに手を掛けた。その手を鬼鮫が上から抑え込む。
「・・・何ですか」
「ここでならいくら泣いてもいいですよ」
言われて振り向くと、粘土と火薬の匂いと一緒に乱雑な部屋が目に入った。
「図工室?いや、実験室?」
どちらにしても胡乱な部屋である。眉根を寄せて判断しかねている牡蠣殻に鬼鮫は事も無げに、
「デイダラの部屋ですよ。言ったでしょう、爆発しかねない芸術家がいるって」
「いや、人の部屋に許可なく入っちゃ駄目です・・・び・・・ッ」
今までにない強さで頬を引っ叩かれて牡蠣殻はよろめいた。
「ちょっと何ですか!わッ、ぐ・・ッ」
逆の頬を更に強く叩かれて、床に尻が着く。抗議の声を上げる前に腕を捕まれ引き立てられた。
鬼鮫は顎を掴んで牡蠣殻の顔を覗き込んだ。
「おや、泣きませんねえ」
「・・・・どんだけ安い展開を期待してんですかアンタは」

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