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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第12章 浮輪波平


「放っておけばいつまでも本を読んでいるような大人しいヤツと説明しましたよ。尋ね描きになる程君に似てもいない。藻裾にからかわれたんですよ。あれとは仲が良いから。それと当人の名誉の為に断っておきますが、彼女は何もやらかしちゃいませんよ」
「じゃ何なんスか」
「ついていない。それだけの事」
波平は立ち上がって三人の凝視をかわした。
「詮索したければ五代目に聞きなさい。何せ私は客分の身の上、我が里の問題とは言え木の葉の介入を貰った以上口を噤むべき立場になる事もある」
窓際に両手を付いて木の葉を望みながら、波平は独りごちた。
「全くこういう絡み合いはつくづく煩わしい」
木の葉の歴代が刻み込まれた山肌に背を向けて、波平は改めて三人に向き直った。
「今日のところはこれまで。無理をさせてしまいましたね。私もここに長居する気はないのでまた会えるかどうかはわかりませんが、何かの折りには今日の埋め合わせをしましょう」
「あの、それで明日は・・・?」
「もういいんですよ。大人が乗り出す事になりましたから」
波平は卓から先程の書き物を取り上げて、小さくたたみ始めた。
「さ、帰りなさい。三人ともひどい顔をしている。風呂に入って休む事ですね。御苦労様でした」
三人を送り出すと、波平は畳終えた紙を懐に立ち上がった。
「木の葉では大人は窓から出入りするのが決まりなのかね」
夕間暮れの事、卓上の小さな灯り一つの光源を切って窓を開ける。
「それともただの立ち聞きかな、カカシ?」
窓表で腕組みをし、橙に染まった火影像を眺めていた男が波平に顔を向けて片手を上げた。
「や。相変わらずですね。先輩」
「お互い様だね、それは」
窓から入って来たカカシを体を避けて通してやると、波平は火影像に淡々とした一瞥をくれて窓を閉めた。
「珍しく忙しそうじゃないですか?もしかしてお邪魔かな」
「酔狂な客を追い返す程忙しい訳じゃないな。私自身に出来る事は限られているしね。とは言え、デグに仕事を頼まないと行けないから私は出るよ?いたければ好きなだけ居てくれて結構」
言いながらドアに手をかけて、部屋を出る。カカシは何の気なしの様子で当たり前のように着いてきた。
「拐われた里人を探してるんじゃなさそうだ」
「彼は迷い子ではないよ。家出人だ。戻るつもりはないようなのでこちらも色々思案する事になってしまってね」

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