第12章 浮輪波平
十班は、裳裾にボロボロにされて戻ってきた。全員が目の下隈で真っ黒、憔悴しきった状態でされた報告の結果は成果なし。
波平は書き物の手を止めてシカマルたちを興味深そうに眺め、労いの言葉を口にした。
「お疲れ様でした。刻限を日暮れに切ったのは正解だったようですねえ・・・」
「・・・波平さん。あのクリーチャーは何なんスか・・・磯の生物兵器ですか?あんなん放し飼いしちゃ駄目スよ。ちゃんと隔離しとかねえと里を傾けますよ、アレは」
「あぁ、そんな事を言うと傾城ってか、やべ、萌えるわぁとか言って大喜びしますよ。ますます手がつけられなくなるので言っちゃいけません」
「ホントにあの人、優秀なんですか?確かに体力だけは無尽蔵でしたけど・・・」
今日一日で三キロは痩せた気がするいのが恨めしげに尋ねる。
「それこそが裳裾の優秀さですよ。アレは周りがへばろうが全滅しようが、下手をするとそれに気付く事さえなくいつまでも任務を遂行し続ける図太さと体力を持っている。これは実に稀有な才能と言っていいでしょう」
「・・・周りが全滅してるのに気付かないって、ソレいい事かな・・・?」
恐ろしげにチョウジが呟いた。確かに裳裾ならあるだろう。更に全滅の原因が彼女にあったとしても、大して不思議はない。
「周りの気力を萎えさせるのも得意みたいッスよ」
シカマルは心底疲れきった耳を労るように耳たぶを揉みながら、波平を睨んだ。
「成る程磯の人たちが組みたがらない訳スよね。アンタ体良く俺たちに爆弾押し付けましたね?」
「そういう事になるかな・・・まあ、恨むなら君たちを推したアスマと、太鼓判を押した五代目にしなさい。私は話の流れに沿ったまでですよ」
「・・・アンタ、ホント食えねえ人だな。俺たちが探してるヤツは何をやらかしたんだ?一体どんな真似すりゃあの狂犬病の栗鼠みてぇな女に追われる羽目になるんだ?」
「成る程、随分と思い出深い一日だったようですね。藻裾の評価が実に興味深い」
「アンタんとこの度外れた猛禽の話はもういい。鶏ガラが眼鏡かけたような女ってのはどういうヤツだ?人を生きた尋ね描きみてえ扱いやがって。木の葉にいる今が今、こっちまで巻き込んでソイツを探すって事は相応の事態の筈だ。何が起きてる?」
組み合わせた手の上に顎を載せ、波平は先ほどまで筆を走らせていた書き物にチラリと目をやった。