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melancholia syndrome

第2章 始まりの春


「えっと…あの…」

腰に回された手が私を助ける為だったのは分かっているが、何だか意識してしまう。

「もう、大丈夫なので…」

チラッと腰に回された手を見る。

「あっ…と、ごめん」

その人は私が困っているのに気づいたのかパッと手を離した。

「えっと…ありがとうございました」

ぺこりと頭を下げると男性はいえいえ、と優しく言った。

見た所20代半ばぐらいの彼は端整な顔立ちにスラリと背も高く見るからにモテそうな人だった。

「君は藤城高校の生徒かな?」

彼は私の着る制服を見つめてそう聞いてきた。

「あっ、はい…って時間!?」

そう答えたところで自分が入学式に向かっていた事をようやく思い出した。

もう一度時計を確認するとさっきよりも大分時間が経っていて、本当にギリギリの状態。

「あの!本当にありがとうございました。このお礼はまた日を改めて!」
「いいよ、気にしないで。それより急ぎなよ」

男性はニコッと笑うとじゃあね、と歩き出した。

それを見届けるかどうかの所で私も学校へ向かって走り出した。
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