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melancholia syndrome

第6章 先生と生徒


その人は先生だった。

お面を付けているから顔は見えないけど、間違いない。

「な、何で…ていうか、どこ行くんですか!?」

聞きたい事が多いし、何がおこっているのか分からずにパニック状態の私。

「んー?ちょっといいとこ、かな?」

相変わらず走るスピードは緩めずそう言うと段々と景色が変わっているのに気付く。

お祭りの喧騒はどんどん離れていって、私達は人気の全くない高台へと辿り着いた。

「到着っと…!」

ようやく足を止めた先生はお面を付けたまま振り返った。

「先生っ…一体……どうしたんですか……?」

乱れた息を整えながらそう言うと先生はピット人差し指を立てた。

「もう少しで始まると思うから、ちょっと待てって」
「?」

先生が何を言っているのか意味が分からず小首を傾げる。

先生は意味ありげに笑うと近くのベンチへ腰を下ろし、その隣をポンポンと叩いた。

隣に座れって事かな?

私は戸惑いつつも先生の隣に座ると改めて先生と向き直った。

「あの…何でここにいるんですか?それに、そのお面…取らないんですか?」

おずおずとお世辞にも可愛いとは言えないお面を指差すと先生はアハハと笑う。

「大人だってたまには童心に帰りたいものなんだよ」
「そういうものですか…」
「そういうものなんです」

先生がここに私を連れて来た理由を明かさないまま時間は過ぎていく。

「あの…」

流石に気になってきた頃、そう言い掛けた私の言葉を

__________ドーーーーンッ………

突然の大きな音が遮った。

音のする方を見れば夜空に咲く大輪の花。

「は…なび?」

あまりに突然の出来事にポカンとしていると先生は小さく笑った。

「ホントは例年通りいけば明日なんだけどさ、天気の都合で前倒しになったってさ。俺もさっき知って急いでここまで来たワケよ」

遠くを見つめる先生の目は花火の光で輝いて見える。

「毎年ここで見てるんだけど、さっきここに来る途中で九条が1人でいるところを見かけたもんだから、折角だし一緒に見ようかなって」

迷惑だったか?と付け足して笑う。

迷惑なんかじゃない、迷惑なんかじゃないです。

嬉しいです、すごく。

今すぐに泣きそうなぐらいに。

私はもう、この感情の名前を知っている。

私は先生に恋をしているんだ。

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