第6章 先生と生徒
「ふぅ…」
1人になって深い溜息を吐く。
今日は初めてのお祭りで、楽しくて。
五十嵐君の役に立つ事も出来て。
色々な思いはあったけど、何だかんだ満足している自分がいた。
そして、核心をつく様に先生の顔が浮かぶ。
これだけ毎日考えていたんだから私も薄々気付いていた。
自分にとって先生が特別な存在である事。
他の男の子といる時と先生といる時とじゃ何もかも違っていて、最初はドキドキするのは男の人と一緒に過ごす事が慣れていないからだと思っていた。
でも、今日五十嵐君と一緒にいて気付いてしまった。
それは先生だからなんだ、と。
思い返してみれば私が初めて先生と出会った時、私達は"先生と生徒"という関係ではなかった。
もしかしたら私はあの時既に惹かれていたのかもしれない。
それはいくら考えても分からないだろうけど、そう思う事で自分を正当化したいと思う自分がどこかにいるような気がした。
結局、先生からしたら自分はただの生徒で、そうじゃなくてもただのご近所さんで。
そう思うと自分が惨めで仕方なかった。
思わず滲んだ涙を拭うと私の前に人影があった。
「?」
少し不細工なクマのお面を被ったその人は黙って私を見下ろしている。
「お嬢さん、少し俺と付き合ってくれませんかね?」
不細工なクマさんはそう言うと私の手を取り走り出した。
「えっ…!?ちょ、ちょっと…!」
誰だか分からない不審者に連れられて私は走る。
「あ、貴方はどちら様なんですか!?」
怖くなってそう叫ぶがクマさんは走るスピードを緩めない。
「んな、しけた面してる奴ほっとけるかっつーの」
「え?」
聞き覚えのある声。
そして、この手。
「せ、先生…!?」