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melancholia syndrome

第6章 先生と生徒


「ね、夏祭り行かない?」

彩葉ちゃんからそんなお誘いを受けたのは夏期講習の最終日だった。

「夏祭り?」
「そう、8月の第一土曜日にあるんだけど唯と一緒に行きたいなーって」
「8月の第一土曜日…」

頭の中で予定を確認しようとしたが、そもそも大した予定なんてどの日も入っていない。

「うん、大丈夫かな」

そう答えると彩葉ちゃんは嬉しそうに笑った。

「2人で浴衣も買いに行こっ!あと、下駄も新調して〜」

そんな風に私達が話していると五十嵐君と友永君も話に混じってきた。

「2人共夏祭り行くの?」
「うん、光輝も来る?」

彩葉ちゃんがそう五十嵐君に聞くと友永君が鼻で笑う。

「ハッ、誰がお前みたいな色気より食い気な奴と行くかよ」
「は?アンタは誘ってないし」

またいつものように友永君と彩葉ちゃんは喧嘩を始めてしまった。

入学して3ヶ月経った今となってはこの光景は見慣れたものだった。

本当に仲良しなんだな〜…。

「ほら、隼人も彩葉も喧嘩しないの。皆で行けばいいでしょ」

そう言いながら今にも取っ組み合いを始めそうな2人を五十嵐君が引き離すのも見慣れた光景。

こういう時、いつもしっかり者の五十嵐君は更にお兄さんのように見える。

きっと小さい頃からずっと一緒だったからなんだろうな…。

そんな3人が羨ましくも思うし、そんな中に自分を入れてくれた事を嬉しくも思う。

「全くあの2人は…」

そう言って五十嵐君は苦笑しながら溜息をつくのだった。

でも、何だろう…五十嵐君、少し寂しそう?

友永君と彩葉ちゃんを見ている五十嵐君はいつも少しだけ寂しそうに見える。

不思議に思って五十嵐君を見ていると、五十嵐君と目が合う。

「九条?」
「あ…ううん、何でもないよ」

私はそう言って首を振った。

「じゃあ、時間はまた今度メールするね」

そして、その日はそこでお開きとなったのだった。

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