第5章 大人と子供
「え…?」
一瞬、自分の耳を疑った。
まさか、"いいよ"なんて言われるとは思ってなかった。
「何でもいいって言っただろ?これぐらいお安い御用ですよ、お嬢さん」
先生は少し演技がかった風に言うと悪戯っぽく笑う。
「それにしても君も可愛いとこあんのね、頭撫でて欲しいなんて欲のない奴」
「そんなこと…」
私は小さい時から両親とは疎遠だったし、家にいるお手伝いさん達は私とは距離を取った生活をしていたからあまりそういう思い出はない。
だから、それはすごく欲しくて仕方ないものだった。
「ん、良く頑張りました」
先生はクシャッと私の頭を撫でる。
先生の手は大きくて少し骨ばっていて温かい。
優しく撫でるその手は何だかフワフワしていて、気持ちが良くて
「えへへ…」
「…!」
幸せだなって、私は笑っていた。
「君ね、そんな幸せそうに笑って…それじゃあまるで恋する乙女みたいじゃん」
「えっ…!?」
予想外の言葉に顔が熱くなる。
カァッとなった頬は隠す術もなく
「えっ……あの、……これは…違くて……」
しどろもどろになりつつ言葉を紡ぐが上手い言葉は出てこない。
「_____っ…!!」
先生は一瞬だけ顔をしかめると私の手首をぐっと掴み
ドサッ
もう片方の手で私の口をふさぐと、そのまま床へと押し倒した。