• テキストサイズ

melancholia syndrome

第5章 大人と子供


「出来ました!」

少し時間はかかってしまったが、私は自力で問題を解く事が出来た。

「お、じゃあ見せて」

先生は私から回答用紙を受け取ると途中式を確認する。

最後の答えまで見終わると赤ペンで大きく花マルを書いた。

「ん、上出来!」

先生は満足気にそう頷いた。

「よし、何かご褒美をあげよう」

先生はそう言って得意気にふんぞり返る。

「ご褒美…ですか…」
「おう、何でもいいぞ!アイスでもジュースでも何でも奢ってやろう」

先生はドンッと自分の胸を叩いた。

とは言っても急には何も思いつかない。

アイスやジュースを買って貰うのも申し訳ない気がしてしまう。

「ほーら、遠慮する事ないぞ!何でも言えって!」

乗り気な先生に対して断るのも失礼な気がする。

私は暫く考えて1つだけ思い付いた。

「あの…1つだけお願い事をしてもいいでしょうか?」

私がそろりと挙手をすると先生は

「ん?何でも言っていいぞ?」

と言ってコーヒーを一口飲んだ。

「えっと…その……」

いざ、口にしようとすると何だか恥ずかしい。

「何だよ、勿体ぶってないで言えって!本当に何でもいいんだから」

先生は私の様子が可笑しかったのか、そう言って笑った。

「あの…頭……」
「頭?」
「撫でて……欲しい…です」
「えっ…?」

先生は予想外だったのか素っ頓狂な声を上げる。

「懇親会の時…あの時、先生が頭を撫でてくれて…それが嬉しくて…」

私が思い出したのは懇親会の時のこと。

私はあの時の先生の温かい手が忘れられなかった。

「私、あまり人に頭を撫でてもらう事が無かったので…出来ればもう一度撫でてもらいたいな〜なんて…」
「…。」

先生は無言で私の顔を見つめていた。

先生が何を思っているのか私には分からない。

「って、無理ですよね!ごめんなさい、今のやっぱり無しでお願いします!」

沈黙が怖くて私はそう言っていた。

「えっと…じゃあ……」

何をお願いしようかと私が再び考え始めた時、先生は口を開いた。

「いいよ」

/ 58ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp