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melancholia syndrome

第5章 大人と子供


五十嵐君の意外な言葉にまたしても私は驚いていた。

「ほら、懇親会の時怖い思いさせちゃったから…あの時は言えなかったけど1人にしてごめん…」

五十嵐君は立ち止まって深々と頭を下げた。

「そんな…あれは私が勝手にした事で…頭を上げてください!」

道行く人々は私達を見て何事かと首を傾げている。

「それに、私は五十嵐君に感謝しているんです」

私のこの言葉に五十嵐君はゆっくりと顔を上げる。

「…感謝?」
「私、昔から友達とかいなくていつも1人だったんです。でも今は、五十嵐君や彩葉ちゃんや友永君がいて、そのきっかけを作ってくれたのは教室で五十嵐君が話し掛けてくれたからで…!」

自分でも何を言っているか分からなかった。

でも、どうしても五十嵐君に伝えたい。

「私、今すっごく楽しいです!」

そこまで言い切って私は五十嵐君を見つめる。

五十嵐君は暫く呆然としていたが、やがてその顔に笑顔が戻った。

「そっか、俺でも九条の役に立てたんだ…」

五十嵐君が私の手を取る。

「俺も九条と友達になれて良かった」

そう言って五十嵐君は満面の笑みで笑った。

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「送って頂きありがとうございました」

私がそう言って頭を下げると五十嵐君はいいよ、いいよと笑う。

「こんなに遅くなったのに1人で帰す訳にいかないし、俺がそうしたかっただけだから」

五十嵐君はそれだけ言うと、また明日と言って帰っていった。

「…ありがとう、五十嵐君」

私は五十嵐君の背中が見えなくなるまで、その場から離れなかった。
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