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melancholia syndrome

第5章 大人と子供


「__あ〜〜っ!今日は勉強した〜〜!」

外に出ると段々と暗くなりかけてきた空が私達を迎える。

彩葉ちゃんが大きく伸びをして言うと友永君はハッと鼻で笑う。

「大して勉強してない癖に」
「アンタには言われたくないわよ、アンタには!」

まさに一触触発、再び喧嘩が始まりそうな雰囲気となる。

「はいはい、2人共喧嘩しないの」

五十嵐君が2人の間に割って入ると2人共渋々下がって行った。

「こんな所で喋ってても暗くなるばっかだし今日はもう帰るよ、隼人は彩葉を送っていくこと」
「はぁ!?何でコイツと…!?」

五十嵐君の一言に友永君は抗議の目を向けるが五十嵐君は2人を押し出してしまう。

友永君は仕方なさ気に彩葉ちゃんと帰って行った。

「じゃあ、俺達も帰ろっか」

五十嵐君は振り向くと私にそう言った。

「あの、いいんですか?あの2人…」

また喧嘩してしまうのではないか、と心配になりそう問いかけると五十嵐君は小さく笑った。

「大丈夫、ああ見えて隼人は昔から彩葉の事を大事にしてるから」

五十嵐君は優しく笑うと少しだけ俯いた。

「あの2人の事、よく見てるんですね」
「まぁ、だてに長い付き合いじゃないし。幼馴染みだからね」

ふと、五十嵐君の横顔が寂しそうに見えた気がした。

自分でもどうしてそう思ったのか分からなかったけど五十嵐君は2人が帰って行った方をほんの一瞬だけ見ていたように私は見えた。

「それより九条、今日体調悪かったりした?」

五十嵐君はさっきの横顔は嘘だったかのようにいつもの顔で私に聞いてきた。

「そんな事はないですけど…」

特に激しい運動もしてないし、体調は万全だったはずだ。

「そう?何か心ここにあらずな感じだったから…」

五十嵐君は心配そうな顔をしていた。

「あ、いや…お恥ずかしい話なんですが、あまり男の子とこういう風に勉強したり2人きりになる経験が無かったので緊張していたというか…」

こんな事を言うのは子供っぽくて恥ずかしかったから私は俯きながらそう言った。

「そうなの?…そっか、良かった」
「え?」

良かった、と言って五十嵐君は優しく笑う。

「もしかして嫌われてるのかなーって思ってたから」
「え?」
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